Pfeil von einem Kompass zeigt auf das Wort Future

前回までは、本質的に地方経済を活性化させるためには、地方に権限を委譲することについてコメントしました。
その中で親会社と子会社の関係からなぜ地方に権限を委譲したほうが良いのかをコメントしました。またその中でイタリアの事例をベースに地方創生の可能性を考えました。
今回は、現在進行形のプロジェクトを踏まえてなぜ成功事例が少ないのか、権限という観点から考えたいと思います。

例えば、ふるさと創生やリゾート法がありました。国家主導のプロジェクトです。この結果、全国に多数のバッハホールなどが増えました。また完成した瞬間から集客に苦しみ赤字を生み出すテーマパークや単に自然をコンクリートで埋め尽くすのみのリゾート開発、赤字の第三セクターが増加しました。2020年東京オリンピックの議論もそうだと感じますが、わずか開催数週間のために莫大なお金をかけて箱モノを増やす取り組みは、過去からの事例を見て分かるように成功しません。建設した後の運営に明確な主体と責任がないからです。

一方、大分発の「一村一品運動」の取り組みは非常に素晴らしいものですが、規模が小さいがゆえに県民経済に与えるインパクトが小さいです。上勝町に見られる「葉っぱビジネス」もそこに住む高齢者には元気を与える取組ですが地方再生という規模感からするとやはり経済の発展に寄与はしにくいです。
国の動きを見れば、箱もので大きなお金を使って終了。地域の動きを見れば取り組みに権限がないため自由な経済を様々な地域から取り組むことができない。結果、目を見張る効果を上げる事例が少ないのです。

そもそも企業が何かを行う際は、自社がどのような方向性に進むのか。という議論、いわゆる戦略を明確にします。
しかし昨今の地方創生はスローガン的なモノであり、実際の定義する地域をどのようにするのかという方針が不明確なままです。つまり、その地方が何に特化して、どのような強みを活用して自治体(市町村)が飯を食うのかという議論がなされないまま、散漫的にばらばらに好き勝手に行われています。

ここでは世界中で成功されているという地方創生の事例をみてみましょう。

まずは誰でも聞いたことのあるシリコンバレー。その地域に特定のイノベーションを起こす企業や個人を集積化して、実際に実現している地域です。米国のシリコンバレー、中国の中関村、台湾の新竹サイエンスパークが相当します。全世界の企業を誘致してバックオフィス業務などに特化した中国の大連、フィリピンのマカティ。カジノやMICEを全面に出してやはり全世界から人を集める、中国のマカオ、シンガポール、フロリダ州のオーランド。
日本でも、上記の真似事は見ることができますが、上述したように世界中から集めるとなると地方は国にお伺いが必要ですし、国は連続性のある期間で責任をもつ取り組みが少なくとも民衆レベルでは観察できません。従って、地域レベルの焼き回しとなり散々な状況になっています。

タイのサムイ島やインドネシアのバリ島は、ここ10数年、スーパーリゾートを島ぐるみで開発していき、世界中の超金持ちでにぎわっています。また、カナダのウィスラーやブラックコムはそのスキーリゾート版です。複数の企業が集まっているもののコンセプトは同じで、ユーザーは自由に他の施設のリフトもスキー場も滑ることができます。また、下った先で元のゲレンデやホテルに戻るためのインフラも充実しているため巨大な山を1週間かけて滑るなど自由に楽しめます。日本の場合は、各スキー場が連携していなく、自分のスキー場の都合しか考えないため、顧客はその施設を離れることができません。

イタリアのトスカーナ地方やパルマ。フランスのボルドー。スペインのサンセバスティアン。これらは言わずと知れたハムやチーズやワインの産地。ですが、よくよく考えると一つの地域がブランドとなり、かたくなにその品質やブランドを向上する取り組みを地域ぐるみで世界に発信しています。
日本でも地域ブランドの取り組みはありますが、結局はその規定が明確ではなく、複数の企業が勝手に言い合い、それぞれが戦いるため上記のような世界的な取り組みに発展できずにいます。

このように世界中で成功している地方創生のモデルを見てみると、大きく3種類程度の方向性が見えてきます。
ひとつは、完全に自給自足で世界に目を向けない取り組みです。上述した取り組みのアンチ策です。日本では昔の江戸時代が相当しました。270年くらい続いた江戸時代のエコシステムは多くの研究者が今でも研究の対象として取り上げるほどです。人々の生活は決して豊かではなかったとされますが、飢え死にすることはありませんでした。しかし、このモデルは当時の経済規模が小さかったから成立するもので、このモデルを地方創生に転用すると成り立たない地域が殆どでしょう。

次に、米国のように道州制、連邦制が統治され国に代わって各地域が大きな権限を持ち、外交、防衛、通貨の発行などができる地域の取り組みです。各州は独自に税の取り決めや建築基準の取り決め銃の所持や娯楽の範囲などを自由に決定する権利があります。従って、地域ごとに規制を作ったり壊したりして世界中から必要な顧客や企業を集めることができます。これを模倣するのは不可能です。日本は自治体にそもそもの独立した権利が存在しないのですから、これを模倣したところで中身のない学生の論文になってしまうのが関の山です。

3つ目は、イタリアのモデルです。国が豊かになるのではなく地域が世界でも一番になる取り組みを行い、地方を栄えさせる取り組みです。どんな小さな町でも自前の産業を持ち、世界化して経済的に自立します。はじめから地域を相手にしないで世界を目指すのです。各地域がブランドとなるので、後から追随する安い模倣品がきてもその地位が揺らぐことはありません。この取り組みはわが日本に対しても不可能ではありません。

次回のコラムでは、このようなイタリアモデルを取り入れた地方創生について考えてみたいと思います。

参照:2016年3月 向研会資料
参照:イタリアの地方分権の道程と産業クラスタの形成(小門裕幸)

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biznavi
早嶋 聡史 氏
(はやしま・さとし)
株式会社ビズナビ&カンパニー 代表取締役社長
株式会社ビザイン 代表取締役パートナー
株式会社エクステンド 取締役
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会 理事

長崎県立長崎北高等学校、九州大学情報工学部機械システム工学科、オーストラリアボンド大学経営学修士課程修了(MBA)。
横河電機株式会社の研究開発部門(R&D)にて産業用ネットワークの研究に従事。MBA取得後、海外マーケティング部にて同社主要製品の海外市場におけるブランド戦略・中期経営計画策定に参画。B2Bブランディングの先駆けとして後に知られるようになったVigilanceという力強いブランドキャンペーンを実施。退職後、株式会社ビズナビ&カンパニーを設立。戦略立案を軸に中小企業の意思決定支援業務を行う。また成長戦略や撤退戦略の手法として中小企業にもM&Aの手法が重要になることを見越し小規模のM&Aに特化した株式会社ビザインを設立。更に、M&Aの普及活動とM&Aアドバイザーの育成を目的に一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)を設立。現在は、売上規模数十億前後の成長意欲のある経営者と対話と通じた独自のコンサルティング手法を展開。経営者の頭と心のモヤモヤをスッキリさせ方向性を明確にすることを主な生業とする。
【著書・関連図書】
できる人の実践ロジカルシンキング(日経BPムック)
営業マネジャーの教科書(総合法令出版)
ドラッカーが教える実践マーケティング戦略(総合法令出版)
ドラッカーが教える問題解決のエッセンス(総合法令出版)
頭のモヤモヤをスッキリさせる思考術(総合法令出版)
【関連URL】
■戦略立案のビズ・ナビ&カンパニー
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■日本M&Aアドバイザー協会
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