あの人に聞きたい 第6回 朝来 浩一郎氏 /大分県事業引継ぎ支援センター統括責任者補佐 #1」からの続き

■企業の数だけ事業承継のカタチがある
──事業承継の具体的な事例を聞かせていただけますか?
朝来 同業者同士のM&Aでは、みらいしんきんのお客様でもある株式会社土屋車両(大分市西新地)の例があります。同社は大型・特殊車両に特化した自動車整備工場なのですが、小型車両を得意とする近隣の株式会社白石自動車整備工場(大分市西新地)と経営者同士の親交をお持ちでした。しかし、白石自動車整備工場は先代がお亡くなりになられ、今後の事業展開に悩まれており、土屋車両の社長も心配していたようです。そんな中、みらいしんきんから当センターを紹介いただき、同じ業種でもチャネルが被らず、お互いの相乗効果が発揮できるのではないかという考えから、第三者承継に踏み切られました。
※詳細は以下のリンク先で紹介されています。
2018年9月版・みらいしんきんミニディスクロージャー」(抜粋)

──同業者以外との事業承継もあるのですか?
朝来 まったく業種が違うケースでも、経営者同士の親交から第三者承継につながったことがあります。印刷会社の株式会社クリエイツ.と、別府市で手づくりの豚まんを販売しているぶたまんの店 幸崎のケースがあります。幸崎の経営者が高齢だったこと、後継者が不在だったことから、市内の企画会社であるクリエイツ.が名乗りを上げ、実現したものです。もともとクリエイツ.は豚まんの販促支援などを長年続けてきた先であり、今回の事業承継を機に「事業承継補助金」を活用した製造ラインの機械化も実現させました。おかげで「ニッパチの豚まん」という愛称で親しまれてきた別府市民のソウルフードを残すことができました。

──地域にとってもWin-Winの事業承継になったようですね。
朝来 ご主人がお亡くなりになり、廃業を考えていた奥様が商工会議所を通して当センターに相談され、承継先を見つけたケースもあります。当先は既に事業を辞めていたので、売却価格も微々たるものでしたが、ご本人は安堵して涙を流されていました。
※詳細は以下のリンク先で紹介されています。
2019年9月版・みらいしんきんミニディスクロージャー」(抜粋)

■創業の「志」を未来へつなぐために
──これから支援センターを運営するにあたっての課題は?
朝来 現在、支援センターに登録されている県内企業は約750件ほどあり、うち売却希望が6割、買収希望が3割、その他1割という状況です。ところが、その中で具体的に話が進んでいるのは1割程度でしかありません。その大きな理由は、「第三者に事業を売ることに抵抗を感じる」こと、そして「まだ喫緊の経営課題ではない」と考える経営者が多いことです。

──高齢でありながらも「まだまだ出来る」と考える経営者も多いのでしょうね。
朝来 私は、事業承継に経営トップの年齢は関係ないと考えます。健康な方なら70代でも80代であっても、すべて自分で手がける経営者もいますし、登録はしたものの「後継者を探してほしい時は、こちらから連絡します」という経営者も多い。事業承継は避けて通れない道です。元気なうちに準備をしておくべきです。
支援センターを訪ねて来られる方の多くは「誰に相談していいか分からなかった」と話されており、センターの存在を広く知っていただくことは必要だと痛感しています。商工会議所や金融機関などで事業承継をテーマにした経営者向けの啓蒙セミナーの実施や、弁護士会や税理士会といった士業の皆さんの力も借りながら、多くの経営者にその重要さを呼びかけるよう取り組んでいます。

──事業承継を考えるにあたり、経営者が意識しておくべきことは何でしょう。
朝来 まずは、事業を毀損させないことが第一でしょう。経営者の年齢が上がるにつれて事業を縮小したり、従業員を少なくするのはよくあることですが、そうすると事業価値は下がってしまい、買い手もなかなか見つかりません。だからこそ自分の事業を磨き続けることが大切ですし、元気なうちからどんな事業承継をするべきか自分なりの構想を描いておくべきです。
また、既に廃業を考えていらっしゃる方も、「自分には関係ない」と思わないことです。事業そのものを既にやめてしまっていたとしても、工場に機械が残っていれば売却するなど、何か引き継げるものがあるかもしれません。会社は経営者だけのものではなく、従業員や取引先もいます。すべての人が納得できる形を見つけるためにも、ぜひ支援センターを活用していただきたいですね。

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profile

あさき・こういちろう/1963年生まれ。中小企業診断士。大分県商工会連合会 大分県事業引継ぎ支援センター統括責任者補佐。1981年、大分商業高校卒業後に株式会社トキハへ入社。本店婦人雑貨部マネージャー、トキハわさだタウン婦人雑貨部仕入課長、営業次長などを歴任。2003年、中小企業診断士登録。2009年に株式会社トキハを退職し、翌2010年に朝来中小企業診断士事務所を開所。2016年7月から現職(非常勤)。大分県再生支援協議会による経営改善計画策定、大分県経営革新計画認定支援、経済産業省・大分県の補助金申請および実務支援、事業承継支援など実績多数。
■大分県事業引継ぎ支援センター
https://hikitsugi.oita-shokokai.or.jp

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