The wailing Wall and the Dome of the Rock in the Old city of Jerusalem at sunset, Israel

■問い
イスラエルは何故、スタートアップ大国として、特にセキュリティ分野に明るいのでしょうか?

■答え
地政学的な観点から、いつ戦争が起きてもおかしくない。そこでイスラエルは自国を守るために国家的な取り組みとしてサイバーセキュリティ技術の向上に力を入れています。小さいころからIT教育が始まり、兵役でもプログラミングを行いながら開発を行うことも珍しくありません。その結果、国民全員がIT技術に明るく、世界的に類を見ないくらいのスタートアップ天国となり、次々に新しい会社も生まれているのです。

■解説
まずはイスラエルの注目企業をいくつかご紹介しましょう。

・ACIDインテリジェンス
SNSや犯罪サイト、チャットやダークネットを監視する技術を提供する企業。アラートをダッシュボードでリアルタイムに表示してメールで通知する。
URL http://www.acid-tech.co/

・AGAT
マイクロソフトのビジネス用Skypeで安全な通信を実現する。外出先のスマートデバイスからも安全にマイクロソフトのサーバーにアクセスできる。
URL http://agatsoftware.com/

・SecBI
様々なログデータを読み取り、機械学習を繰り返しながらセキュリティの脅威を検出、分析、管理する仕組みを提供する企業。
URL http://www.secbi.com/

・サイバーグローブス
ソーシャルメディアにおける犯罪行動を検索、分析しながら犯罪を未然に防ぐためのサービスを法執行機関に提供する企業。
URL http://innonegev.com/cyberglobes

これらは2017年に行われた「CyberTech 2017(サイバーテクノロジーに代表する革新的な技術を展示する見本市、毎年イスラエルで開催される。)」のスタートアップ展示エリアに出店していた企業の、ほんの一部を抜粋したものです。いずれもイスラエルに本社、もしくは研究開発施設がある企業です。他にも多数の企業が出展していて、イスラエルの技術のすごさが分かる見本市です。
サイバーセキュリティ先進国であるイスラエルは、スタートアップ大国であることもその強さの1つとなっています。現在、同国はセキュリティ関連のスタートアップが500社以上もあると言われています。
なぜ、イスラエルはこのようにIT大国となっているのでしょうか?
今回はイスラエルについて見ていきます。

イスラエルは中東のパレスチナに位置する国家で、北にレバノン、東北にシリア、東にヨルダン、南にエジプトと接します。人口は約870万人。面積は四国と同じくらいの大きさで、民族はユダヤ人が75%、アラブ人他です。宗教はユダヤ教、イスラム教、キリスト教等で、言語はヘブライ語、英語の他に、アラビア語やロシア語がつかわれています。一人当たりのGDPは約3.9万ドル(2017年)です。
そんなイスラエルですが、人口1人当たりの世界一がいくつもあります。例えば、ベンチャーキャピタルの投資額、技術者や科学者の数、更にM&Aの数も過去に何度か1番になっています。海外からの研究委開発投資額や研究所の施設数も人口当たりの数が多く、今でも毎年1,000件程度のペースで新設が進んでいます。ユダヤ人という点で見ればノーベル賞受賞者率、フィールズ賞受賞者率も2割を超えています。
米国と比較しても顕著なことがあります。米国に次いでナスダック上場企業数が多く(1997年から2013年)、米国に住むユダヤ人はイスラエルと同等の500万人といわれます。

何故、イスラエルはセキュリティに強いベンチャーが多数生まれ、実際に世の中に大きな技術貢献をしているのか。その1つに天才を育てる環境があると言えます。
その特徴は、早い時期にプログラミング教育を開始していることです。平均して10歳前後から基礎的なプログラミング教育が始まり、中学校に相当する12歳からは、ソフトウェア開発やサイバーセキュリティの教育が開始されます。これが15歳まで義務教育として続けられ、その後は選択制となり更にプログラムの習得に進むことができます。
プログラムサイドに進むと18歳になる頃には世界中で、その業界では渡り合えることができるレベル感に育っているそうです。また、特に優秀な学生に対しては17歳から18歳の間に国家規模で技術を鍛え上げるプログラムも準備されています。

国家として教育の主軸にプログラミングを取り入れている背景は、イスラエルの軍事的な取り組みがあります。地政学的にイスラエルはいつ戦争が起きてもおかしく無い状態が続いています。そのため、国民皆兵国家で、満18歳になると男子は3年間、女史は2年間の兵役があります。
兵役の特徴も、継続的にプログラミング技術の取得を行うことです。実際に、兵役中にプログラミングを通してセキュリティの危機の開発を行うことも良くあるそうです。近年の戦争は、サイバー戦争でもあり、ミサイル防衛の技術1つにしてもITを駆使することが重要です。従って、国を挙げて、軍を挙げて国民がITに強化する方針を取っているのです。
従って兵役を終えた国民は、ある程度起業に必要な世界レベルの技術を保有していることが多く、これがITを軸としたスタートアップにつながっているのです。

更に、起業を後押しする文化もイスラエルにはあるようです。
例えば、日常的に沢山の問題を発見して、常に問題解決をする議論を行っています。家庭の中でも常にそのような会話が行われアイデアを出し合うことを楽しむ文化があるのです。

他の国民性と異なり、常に本音で語り合い、上司や上限の関係があっても建前無しで議論するという性質もあります。また、議論をして終了ではなく、積極的に行動に移す国民性もあります。これはある意味戦争状態が続く中で、今すぐできることは、今日でも解決しなければいけない。そのような気持ちがあるのでしょう。
しかも近年になり、その解決する方向性はテクノロジーを使った手法です。また、新しいことに挑戦して失敗しても、そこからまた新たな学びが得られ、次につながるという発想を多くが持っています。従って失敗そのものが加点され、そこからまた成長するという国民性をもっているのも特徴です。

国民性として家族を最も大切な単位と考え、毎日午後6時には家庭に戻り、毎週金曜日は家族で全員集合する。大企業に入るよりは、自分たちで挑戦して問題を解決することを美徳とする文化も、起業を後押ししていると考えることができます。
戦争が常に身近にあるという視点、一日一生という思想が身に付いており、家族を核としながらも、安全はITセキュリティで守り、何かあれば常に自分たちで考えてその日に解決する行動を取る。開発のスピードがあがり、正に天才を生む環境がそろっているのです。

そんなイスラエルのスタートアップ企業の特徴は、9割の起業が3度目ということです。
皆、いきなり成功ではなく、様々に経験を積んでいるのです。従って起業の平均年齢も日本と比較して10歳以上高いと言われています。

また、起業は初めからチームで行うことが多く、皆技術者であることが特徴です。
その際、仲間は兵役の同期や先輩後輩で集うチームも多くあるそうです。兵役中に在籍した組織によってサイバーセキュリティの担当があり、その分野に明るい人脈を自然と身に付けることができるからだと考えられます。

今後、ますますイスラエルの技術を使った新しい商品や解決策が世の中に浸透していくのでしょう。
日本人も負けないで頑張らないといけないですね。

 

profile

biznavi
早嶋 聡史 氏
(はやしま・さとし)
株式会社ビズナビ&カンパニー 代表取締役社長
株式会社ビザイン 代表取締役パートナー
株式会社エクステンド 取締役
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会 理事

長崎県立長崎北高等学校、九州大学情報工学部機械システム工学科、オーストラリアボンド大学経営学修士課程修了(MBA)。
横河電機株式会社の研究開発部門(R&D)にて産業用ネットワークの研究に従事。MBA取得後、海外マーケティング部にて同社主要製品の海外市場におけるブランド戦略・中期経営計画策定に参画。B2Bブランディングの先駆けとして後に知られるようになったVigilanceという力強いブランドキャンペーンを実施。退職後、株式会社ビズナビ&カンパニーを設立。戦略立案を軸に中小企業の意思決定支援業務を行う。また成長戦略や撤退戦略の手法として中小企業にもM&Aの手法が重要になることを見越し小規模のM&Aに特化した株式会社ビザインを設立。更に、M&Aの普及活動とM&Aアドバイザーの育成を目的に一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)を設立。現在は、売上規模数十億前後の成長意欲のある経営者と対話と通じた独自のコンサルティング手法を展開。経営者の頭と心のモヤモヤをスッキリさせ方向性を明確にすることを主な生業とする。
【著書・関連図書】
できる人の実践ロジカルシンキング(日経BPムック)
営業マネジャーの教科書(総合法令出版)
ドラッカーが教える実践マーケティング戦略(総合法令出版)
ドラッカーが教える問題解決のエッセンス(総合法令出版)
頭のモヤモヤをスッキリさせる思考術(総合法令出版)
【関連URL】
■早嶋聡史の戦略立案コンサルティング
http://www.biznavi.co.jp/consulting/strategy_planning

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■中小企業のM&Aビザイン
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