1807_column

早いもので7月に入りました。1年の後半の始まりです。関東地方ではすでに梅雨明けし、夏本番も目の前です。
全く盛り上がっていなかったサッカーワールドカップは、日本代表の予想外(?)の活躍で一気にテンションが上がりました。残念ながらベスト8には届きませんでしたが、マスコミは一斉に手のひらを返したように監督・選手を絶賛・称賛しています。サッカー協会が冷静に「4年間を総括」してくれることを期待していますが、果たしてどうなることでしょうか。
一方トリニータは、このところあまり芳しい試合ができていないような気がします。
ただ、何とか結果がついてきており、シーズン前半を首位で折り返すことができました。
長いシーズンですから、この先何が起きるか全く想像できませんが、11月の終わりに皆様と喜びを分かち合う日が来ることをひたすら信じて日々の業務に取り組みたいと思います。

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「経営・フロントのプロ化」テーマの最終回は、「スタッフ・組織のプロ化」に向けた取り組みについて触れたいと思います。

【その1 会議体改革】
会議・意思決定における権限委譲

トリニータのフロントスタッフは、わずか30人程度の組織のわりに「やたらと階層が多い」という欠点があります。役職も複雑で、着任当初はまるで大企業のようだと感じました。
本来であれば、その組織構造そのものを改革してしまうことが重要なのだとは思うのですが、まずはいったんソフトランディング的に「権限委譲」を推し進めています。簡単に言えば、社長以下数名の経営幹部は「部課長会議に出ない」。彼らに意思決定の議論・プロセスを委譲しようとしています。
これによって「自分たちの仕事は自分たちで決めていく」「プロセスをしっかり管理し、高い成果を追求する」という当事者意識が育ち・定着していくことを期待します。
組織は放っておけば年を取り、さまざまなことが硬直化してきます。この弊害を避ける意味においても、30~40代には「権限委譲」をチャンスととらえて飛躍してもらいたいですし、経営幹部は一段上の仕事(将来を創る仕事)に時間を割けるようにできると思います。

【その2 人事制度改革】
目標設定から評価査定までのプロセス公開と委譲

業務上の目標は誰が設定するのか?
幸か不幸か、私は新入社員時代以降「自分の目標は自分で作る」ことが当たり前の会社で働いてきました。故に、「上司が目標を決めて、上司が評価する」企業に「プロのサラリーマン」は生まれないと思ってきました。仕事においてのプロか否かは、その契約形態にあるのではなく、「目標設定・検証プロセス・成果への評価・責任」の所在がどこにあるかの問題だと思っているのです。「自分の責任」を強く意識することがプロへの第一歩ではないでしょうか。
トリニータの人事評価制度の改革は、まさにここにメスを入れるものです。この仕組みを導入していくことで、上司の役割は、仕事や部下を「管理する」から、彼らの成果目標達成を「助ける」「支援する」に変わってきます。
組織全体の成果を高めるために、当人にとって適切な目標を一緒に考え、進捗過程においてアドバイスし、最後はきちんと評価し、次なる目標を作っていく、という人事評価におけるPDCA」を自分たちの力で回せるようになっていくことで、トリニータのスタッフ全体がもっともっと活性化していくと信じています。

【その3 文化の改革】
読書会(通称:とりべん)の開催
私は過去3社で社長を務めてきましたが、常に実施していたのが「読書会」です。
社長とはいえ40代前半で、メンバーに語る言葉・経験には限りがありました。それを補ってくれるのが「本」でした。
読書会の選書・運営には強いこだわりがありました。ただ本を読んで感想を話し合うというものではありません。この読書会を通じて、①社内の共通言語を創る ②学ぶ習慣を身につける ③人前で話すスキルを高める ④経営者の考え・思いを伝える ⑤学んだことを実行する という欲張りな目的を持っていたのです。(会の名称にもこだわっていて、以前は「礎道場」と命名していました)
トリニータでもこの取り組みを始めました。「とりべん」というのは「トリニータの勉強会」という意味で、参加者が決めた勉強会です。自主性・自発性を尊重して参加は任意です。時間は朝8時から9時までの1時間。現在は2週間に1冊のペースで開催しており、これまでに計5回実施しました。
「これまでほとんど本を読んだことがない」というメンバーも多数いて、この辺りが一般企業との違いだと驚くこともあります。さらには「任意参加」ということで、現在はまだ3分の1程度の参加率なのが気になっていますが、日々の継続的なインプットや努力が、将来大きな違いを生むことに、少しでも早く気づいてくれればいいなと思っています。
サッカー選手が「練習しないやつが上手くなるわけない」というのと同じことで、インプットしないビジネスマンが仕事において進歩成長するはずがないと気づいてくれることでしょう。

「フロント・組織のプロ化」には時間がかかります。目に見えない改革です。
私は、この改革に取り組むことが、トリニータをもう一度強い組織・チーム・企業にしていくための王道であると思っています。現状の延長線上に進歩はなく、組織の発展もないのですから。

最後に、先日の「とりべん」で読んだ本の一節をご紹介して、今回のテーマを終えたいと思います。

強い現場、輝く現場に共通するのは、自主性、自発性、自律性です。これらを生み出し、定着させるために不可欠な要素がリスペクトとプライドなのです。この二つがお互いに影響を及ぼし合い、好循環を生み出したとき、「普通の会社」は「キラキラ輝く普通の会社」へと変身するのです。(『新幹線 お掃除の天使たち』著:遠藤功 あさ出版)

profile

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神村 昌志 氏
(かみむら・まさし)
株式会社大分フットボールクラブ経営改革本部長。
1962年、愛知県半田市生まれ。大阪大学文学部卒業後、1985年に株式会社リクルート入社。2年目よりリクルートUSAへ出向。ロサンゼルスに駐在。外資系企業を経てJAC Japan(現・JAC Recruitment)入社。2003年に代表取締役に就任し、2006年JASDAQ上場を果たす。2008年10月より株式会社アイ・アム代表取締役社長を経て、2012年3月より株式会社アイ・アム&インターワークス代表取締役会長。2015年にはJリーグが設立したプロスポーツの経営人材を養成するビジネス講座「Jリーグヒューマンキャピタル(現・一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル・略称「SHC」)」一期生へ。2016年より現職。趣味はサッカー、ゴルフ、落語、講談、ワイン、読書。アマチュア講談師として年に数回高座にも上がっている。
■大分トリニータ(株式会社大分フットボールクラブ)
http://www.oita-trinita.co.jp
■一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル
http://shc-japan.or.jp