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AFTER OLYMPIC,WITH CORONA~東京の憂鬱、浅草の誤算
新型コロナウイルス第5波が押し寄せ、感染者数最多を連日更新し続ける中、強行実施された東京オリンピック2020は、日本人選手の連日の大活躍で、過去最多のメダルを獲得し無事(?)に閉幕。引き続き緊急事態宣言は継続しながらも東京パラリンピック2020が開幕を待っています。
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4度目の「有事」という状態にもかかわらず、日々渋谷や新宿に人は溢れ続け、連日の猛暑に乗じて「平時」通り冷たいビールを提供する飲食店は増え続けています。その一方で自国開催の世界的大イベントは「泡(バブル)」に包まれながら淡々と進行しました。
このように未だかつてない「TOKYOカオス」を身を持って体験し、強く感じたこと……。それは、ひたひたと忍び寄ってくる「終わりの無い憂鬱」の足音です。アナリストによる「当初予想の経済効果プラス1.3兆円→マイナス4,500億」とかの机上の計算値ではなく、周りの街の姿が急速に崩れていく、そのプロセスを目の当たりにしている日常に、もはや慣れてしまっていることに驚かされます。
浅草の観光名所「ホッピー通り」は今…
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自分の住んでいる街・浅草をじっくり観察してみると、その「憂鬱」が幻でないことが実感できます。
2年前までは東京有数の観光地・浅草がオリンピックの多大なる恩恵を受けることは明らかでした。
何よりもそれは、ここ数年の新しいホテルの建築ラッシュが物語っていました。大手ホテルのアネックス、東京以外から続々と進出する新興ホテル、インバウンド&バックパッカーに特化したホテルがまさに雨後の筍のようにオープン(もしくはリニューアル)…。ところが2年前、突然のコロナ禍に見舞われ、彼らの目論見は一気に崩れていきました。
もちろん今も必死になって次の手を打っているように見えるホテル・観光業界ですが、(浅草住人としての立場から)冷静に見ても、ここ数年のホテルを中心とした浅草再開発は明らかに戦略を見誤っている点が多かったと思います。

たとえば浅草観光のど真ん中「浅草六区」に2015年開業したホテル併設の大型商業施設「まるごとにっぽん」。全国47都道府県の食や雑貨の名品を一堂に集めた「高級お土産ビル」はコロナ禍前からすでに集客に苦しみ、わずか5年で閉館(休業)に追い込まれました。今年7月に業態変更してリベンジオープンしたものの、核テナントは「ユニクロ」大型店と「スシロー」。まるで地方のロードサイドレベルです。目玉だった全国の名品は食品に絞って、駅ビルの高級スーパー規模程度の大きさで、ひっそりと再開しています。
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2017年には「WIRED HOTEL ASAKUSA」が(小)劇場一体型のエンターテイメントホテルとして、当時日本でも話題だったポートランドの「エースホテル」を手掛けたデザインチームを監修に迎えて、なぜか浅草でもディープなエリア「ひさご通り」に戦略的にオープン。当初はメディアにも大きく取り上げられましたが、コロナ禍より以前にその勢いは衰え、現在はあの場所に相応しい名称の「浅草九倶楽部」として、こちらもリベンジオープン。
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しかし、目玉の劇場プログラムがアニメやアイドル系の内容が中心のため、インバウンド皆無の現状では、近くにある浅草演芸ホール浅草木馬座等、歴史と伝統に支えられた大衆芸能の聖地を前にして、太刀打ちできないのは明らかです。
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さらには、なかなか開発が進まず、やっと完成に漕ぎつけたはずの老舗、浅草ビューホテルの「アネックス六区」もいまだに「OPENING SOON」状態(2021年8月11日現在)。夏休み期間中(オリンピック開催中)の苦肉の策として、1階部分を利用して鬼滅の刃イベントを開催して本格開業前のPRを実施していますが、今更のタイミングでのアニメイベントでお茶を濁している感は否めません。
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他にも同じ観光地・軽井沢の人気カフェを出店させて話題作りに懸命なホテルや、開店休業状態に陥っている中小ホテルはたくさんあり、その多くは浅草という巨大な集客装置に、小手先の「装置(ハコ)」「意匠(デザイン)」「イベント(コンテンツ)」で対応しようとした、先の見えない時代に先を見ない、強引かつ勢いだけの「戦略なき戦略」が明らかに裏目に出ています。

コロナ禍以前は、仲見世通りに外国人の着物・浴衣姿が目立ち、ホッピー通りには国際色豊かな文化交流(相席での飲み会)の景色が広がっていた浅草…。
現時点でまだまだ賑わいは不足気味ですが、演芸場に列を作る落語好きの若者の姿や、地元の人気洋食店・町中華のお店には、再び行列とともに活気が戻り始めています。
あらためて「街」にとって必要なもの(ハード)は何か、大切な文化(ソフト)は何かを問い直すことで2020年代「RISING EAST」の主役・浅草が復活すると痛感する今日この頃です。

そう、マツコ・デラックスも冠番組「マツコの知らない世界」で言ってました。
「また、浅草の時代が来るわね」って。

オリンピック閉幕翌日、関係者らしき外国人グループがいたるところで…
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profile

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柴田廣次
しばた・ひろつぐ/1960年、福島県郡山市生まれ。筑波大学卒業後、1983年株式会社パルコ入社。2004年〜2007年には大分パルコ店長を経験。2018年2月に独立し「Long Distance Love 合同会社」を設立。
■Long Distance Love合同会社
東京都台東区花川戸1-13-6 #504
https://longdistancelove.jp
■「TOKYO LAB 2019」@渋谷クラブクアトロ
Long Distance Loveプロデュースイベント
https://youtu.be/_w89k-PK_O0
■コラムインコラム
ブームなんてどこ吹く風~東京で肉を喰らうなら、ここ!
4度目の緊急事態宣言&オリンピック真っ只中だった東京で、今まで以上に盛り上がっているのが「肉」ブーム。もちろん浅草には昔からあらゆる肉料理の名店が勢揃い。すき焼きの「今半」「米久」(この店では牛鍋)etc、焼肉の「本とさや」「幸福」etc、ハンバーグの「グリルグランド」「モンブラン」etc。そしてステーキと言ったら「Mr.デンジャー。栄枯盛衰の激しいステーキ業界の中で、下町中心に数店舗展開する人気ステーキ店。元プロレスラーの現役時代のリングネームをそのまま冠したお店は、かつての“キタナシュラン”系ではありますが(浅草観音裏店)、文字通り超パンチの効いた「危険な」味付けと「柔らかな」肉質のステーキはいわゆる“やみつき”系で大人気。そしてここは極めて男前な店ですが、実は奥浅草にひっそり、でも連日女性客やファミリーで大盛況の姉妹店Mrs.デンジャーも超おススメです。味もボリュームも値段も、そして何よりもスタッフの接客がパーフェクト、全て文句の付けどころのない、まさに「奥浅草の奇跡」と呼んでも良いお店です。いつ解除されるか神のみぞ知る緊急事態宣言ですが、ぜひ今東京で最も注目されるグルメエリア奥浅草の、危険な肉三昧の旅をいつかご堪能下さい!