労働者とロボットのどちらがいいのかシーソー

第14回 付加価値型と作業型

■問い
今後の働き方ってどのようになっていくのでしょうか?

■答え
付加価値型の仕事と作業型の仕事によって異なります。
付加価値型の仕事は、ヒトの手による仕事がより重視されるようになり、結果的にヒトへの教育投資が増加されます。
一方で、作業型の仕事の多くは、機械が行うようになります。しかし、すべてを機械が行うのではなく、機械ができない例外処理などの作業をヒトが変わりに行うようになるのです。
結果的に、多くの従業員は余裕を持って仕事が出来るようになり、より豊かに、より生産性が高くなるのです。

■解説
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オリエンタルランドは1日、2018年度の東京ディズニーリゾート(TDR、千葉県浦安市)の入場者数が4年ぶりに過去最高になったと発表した。前年度比8%増の3255万人だった。新エリアの開業などを控え、入場者数は増加を続ける見込み。19年度からアルバイトに業績連動の賞与を支給するなど、人手不足を受けて人材への投資を拡大する。
※2019年4月2日付 日本経済新聞 記事抜粋

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オリエンタルランドが「業績連動型」の賃金を、バイトやパートにも適用します。このニュースをきっかけに、パート・アルバイトを含む従業員への働き方に対しての考え方が変化していくと思います。

仕事に関しては、医療や企画などのように、専門的な技能を持つ仕事や、構想力や企画力を駆使してアタマを使う仕事などのような「付加価値型」の仕事と、ある程度慣れると誰でも一定レベルの作業が行えるような「作業型」の仕事に大きく分類できます。

付加価値型の仕事は、コンピューターやロボットやAIなど(以下、機械)に置き換えることがなかなか難しく、今後もヒトの手で取り組むことが主流になるでしょう。加えて、ヒトを介在することで、対象である顧客に対してより高い価値を提供できるサービス業などもヒトの手での取り組みが重要になっていきます。

一方、作業型の仕事は、ヒトが行うことでストレスが溜まり、作業効率が悪いため、徐々に機械に置き換わっていくでしょう。ただし、この作業が全て置き換わるのではなく、全体の6割から7割程度の標準的な作業は機械が担い、残りの例外的な処理はこれまで通りヒトの手で行うようになるでしょう。

作業型の仕事の多くは「2:6:2の法則」に従います。例外処理を含む標準的な仕事が2割、標準的な仕事が6割、その他の仕事が2割です。
機械は繰り返しの作業などが最も得意なので、この6割が機械に置き換わる対象です。一方、例外処理の2割の仕事は、しばらくはヒトの手で行う選択をしたほうが効率良いのです。したがって、機械とヒトが協業する世界が、今後当たり前の景色になっていくでしょう。

現在、多くの業種業界において人手不足が深刻な社会問題になっています。
オリエンタルランドの仕事のように、多くのキャスト(オリエンタルランドで仕事に従事するスタッフの呼称)が仕事をしたいと思っていた仕事でも、状況は同じです。これまでは特段時給が高くなくても人が集まっていましたが、昨今の人出不足で働きたい人の母数が減っており、オリエンタルランドのような企業でも人を集めるのに工夫が必要になってきたのです。

作業型の仕事では、もっと深刻です。成長期は働きたい人の母数が多かったので、それでも十分に人手が集まっていました。しかし少子高齢化になるにつれて働く母数が減少し、人手を確保することが厳しくなります。そのために企業は人件費を上げることで人の確保を行っていました。
しかし、人件費にも上限があります。そもそも作業型の仕事は、利益率が付加価値の仕事と比較して低く、人件費に転換する原資が少ないのです。それでも人手を確保しなければならない。そのような状況が続くと、企業の選択肢はどちらかになります。廃業含め仕事の規模を縮小する方向か、人手の仕組みそのものを機械化する、あるいは省力化する、あるいは事業モデルそのものを見直すことです。

地方で細々と事業を営む零細企業は、経営者自身やその家族の労働力を充てにして作業型の仕事を継続してきました。ところが、高齢化に伴い、いよいよ仕事を続けることが難しくなります。小さな企業も同様で、これまでなんとか確保できていたパート・アルバイトが集まらなくなり、事業自体が成り立たなくなります。だからと言って、事業モデルを根本から変化するための資本も時間も余裕もアイデアもありません。選択肢は「縮小」か「撤退」になってしまいます。

一方、業界の中で規模が大きい、ある程度の地位を占める企業は、人件費を増やしてでも人手を確保して事業を継続・拡大する動きを見せていました。しかし、ある一定レベルまで人件費が高騰すると、根本的に事業モデルを変える方向に舵を切り始めます。そして、今はまさにその過渡期と言えると思います。

例えば、ローソンは全店舗においてセルフレジの導入を今年の10月から開始します。加盟店の切実な問題を規模の経済によって解決するのです。

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ローソンは利用客が自ら精算する「セルフレジ」を導入する。4月から始め、10月の消費増税までに全1万4000店で利用できるようにする。店内にあるレジの一部で利用客が専用端末を使って商品のバーコードを読み取り、精算する。24時間営業を見直す声が加盟店から上がるなど人手不足が深刻さを増すなか、店舗運営を省力化して生産性を高める。

※2019年4月1日付 日本経済新聞 記事抜粋
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セルフレジの導入と聞くと、従業員のレジ打ちが無くなるイメージを持つかもしれませんが、そうではありません。セルフレジの対象は簡単な作業のもので、セキュリティや金銭管理を簡単にするために電子マネーやクレジット支払いに限定します。やや複雑な処理などはこれまで通り従業員が行うのです。
ローソンの計画では、それでも1日の平均的な業務のうち約3割の仕事、時間にして約5時間程度の時間を削減できると目論んでいます。機械とヒトの手を融合した取り組みが始まるのです。

付加価値型の仕事は今後、ますますヒトの教育に投資を増やす方向性に進むでしょう。オリエンタルランドのように、ヒトに付随する仕事で、ヒトが産み出す付加価値を商品の一部として捉えている企業は、よりヒトの手に価値を見出すようになるでしょう。
その一方で、一般向けの広く普及する商品に対しては、標準的な仕事は機械がこなし、例外的な処理をヒトがサポートするという仕組みが定着していきます。この取組によって、人で不足を解消して、働いているヒトもより楽に豊かな時間を過ごせるようになるのです。

結果的に規模が大きい組織に勤めている従業員は、大量の事務ワークや繰り返しの仕事、誰でもできるけど人が不足しているから自分で行わないとならない仕事などからは解放されるようになります。
本来価値を生み出しにくい、しかしそのためには必ず取り組まなければならない作業は、すべて機械が行うようになります。ヒトは、機械ができない標準的な仕事のなかでも例外の取り組みや、創造的な時間に仕事を費やせるようになるのです。

ここ数年は過渡期で、考え方によっては機械に仕事を奪われると、恐怖心を抱くヒトも居るでしょう。しかし、実際はまだまだ人間しか行えないことはたくさんあり、むしろその部分で活躍できる時代がやってくるのです。作業は時間で管理されるようになり、ヒトしか行えない仕事は、結果や質で評価をされるようになる。そのような変化が、ここ数年で一気にやってくることと思います。

profile

hayashima_biznavi
早嶋 聡史 氏
(はやしま・さとし)
株式会社ビズナビ&カンパニー 代表取締役社長
株式会社ビザイン 代表取締役パートナー
株式会社エクステンド 取締役
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会 理事

長崎県立長崎北高等学校、九州大学情報工学部機械システム工学科、オーストラリアボンド大学経営学修士課程修了(MBA)。
横河電機株式会社の研究開発部門(R&D)にて産業用ネットワークの研究に従事。MBA取得後、海外マーケティング部にて同社主要製品の海外市場におけるブランド戦略・中期経営計画策定に参画。B2Bブランディングの先駆けとして後に知られるようになったVigilanceという力強いブランドキャンペーンを実施。退職後、株式会社ビズナビ&カンパニーを設立。戦略立案を軸に中小企業の意思決定支援業務を行う。また成長戦略や撤退戦略の手法として中小企業にもM&Aの手法が重要になることを見越し小規模のM&Aに特化した株式会社ビザインを設立。更に、M&Aの普及活動とM&Aアドバイザーの育成を目的に一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)を設立。現在は、売上規模数十億前後の成長意欲のある経営者と対話と通じた独自のコンサルティング手法を展開。経営者の頭と心のモヤモヤをスッキリさせ方向性を明確にすることを主な生業とする。
【著書・関連図書】
できる人の実践ロジカルシンキング(日経BPムック)
営業マネジャーの教科書(総合法令出版)
ドラッカーが教える実践マーケティング戦略(総合法令出版)
ドラッカーが教える問題解決のエッセンス(総合法令出版)
頭のモヤモヤをスッキリさせる思考術(総合法令出版)
【関連URL】
■早嶋聡史の戦略立案コンサルティング
http://www.biznavi.co.jp/consulting/strategy_planning

■早嶋聡史の事業実践塾
http://www.biznavi.co.jp/businessschool

■中小企業のM&Aビザイン
http://www.bizign.jp