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第22回 世界でもっとも住みやすい都市

■問い
英国経済誌「エコノミスト」が毎年発表する「世界で最も住みやすい都市」ランキングで、2017年まで7年連続の世界1位、最も住みやすい都市に選ばれているメルボルン(現在はオーストラリアのウィーンに次いで2位)。実際、どのような街なのでしょう。

■答え
メルボルンの街並みを体験するために、昨年の2019年1225日から30日の間で視察してきました。メルボルンがなぜ住みやすい都市としてランキングされ続けたかのヒントを探ります。

■解説
【時差】
メルボルンは南緯37度49分、人口100万人以上都市の中では世界で最も南に位置するオーストラリア大陸の南東部にある都市です。訪問した2019年12月末の日の出は6時頃、日の入りは21時頃でした。メルボルンと日本の時差は通常1時間で、サマータイム時期は日本より2時間早く進みます。

【アクセス】
メルボルンを中心にするとLA、パリ、ロンドンからはいずれも12,000km以上離れています。そのためメルボルン・タラマリン空港から出る各種路線は世界でも有数の長距離路線です。成田から直行便があり8,000km強のフライトです。空港からメルボルン市街まではタクシーやシャトルバスや鉄道などの交通機関が充実しており、20分から30分程度のアクセスです。深夜便でも目的地まで安心して迎えます。

【地形】
メルボルンはポートフィリップ湾を囲むように発達して、郊外は東に広がります。南東に位置するダンデノン丘陵とヤラ丘陵からポートフィリップ湾にヤラ川が流れ込みます。北西からはマリビノン川が注ぎ、川と支流の西側と北側は平坦な農業地域になっています。旧市街とヤラ川を挟む対岸のサウスバンク地区は超高層ビルが並びます。郊外は人口密度が低く、片側4車線の道路が網目状に通り戸建ての大きな家が広がります。

【気候】
海洋性の影響が強い西岸海洋性気候です。日によって天気が目まぐるしく変わり、年間を通してはっきりとした四季が感じられません。よく1日の中に四季があると表現されるほど変化します。到着した日は23時頃でしたが気温は10度くらいでした。次の日の日中は30度を超えていました。乾燥しているため気温が上がっても過ごしやすい気候でした。

冬は7月が最も寒く平均気温が6度とオーストラリアの大都市では最も冷え込みます。近隣の山では降雪はありますが平地で雪が降ることは殆どありません。夏は1月が最も暑いとされ平均最高気温は26度です。内陸の砂漠地帯から吹き抜けるフェーン現象の影響で40度を超えることもあります。ただ朝と夜は涼しく熱帯夜になることは殆どありません。

【コンパクトシティ】
1850年代、メルボルンはゴールドラッシュに沸き、世界中から人が集まりました。このときから多種多様な文化の礎が築かれます。
当時の優雅でゴージャスな建築物は、補修や修復を繰り返しながら現在の街並みにも残されています。歴史的な町並みと花々と木々があり、碁盤目状に整備され大きな通りにはトラムが走っています。心地よくのんびりとした雰囲気が漂っています。建物は英国様式の石造りをリノベーションしており、緑が多いことからガーデンシティと呼ばれます。路地裏や川沿い、通りの端々でカフェを楽しむ人が途絶えません。

一方で、オーストラリア第2の都市としての機能は、24時間稼働の空港と、南半球で最大の取扱量を誇るコンテナ港があり、インフラも充実しています。名門校も多数あって高い教育水準を誇り、文化や芸術においてもオーストラリアの中心です。オーストラリアで最もランクが高いメルボルン大学をはじめRMIT(王立メルボルン工科大学)、モナッシュ大学、ディーキン大学、ビクトリア大学があり、多くの優秀な学生が集まります。
また、テニス全豪オープン、競馬のメルボルンカップ、サーフィンの世界大会でもあるリップカールプロ、F1グランプリ開催などスポーツ面においても盛んです。

住民の医療費は無料で福祉面は充実しています。
移民大国・オーストラリアの代表都市でもあるメルボルンは25%が移民で占められており、様々な国や地域の人が住んでいます。当然、それらに対応する施設も充実しており、それぞれの国の人にとっても住みやすい都市になっています。
英国経済誌「エコノミスト」の調査は2002年に始まっていますが、ヘルスケア、教育、インフラ部門では常に首位をキープしています。

さらにシドニーと比較すると、住宅は購入しやすい価格帯です。メルボルンの平均的なコンドミニアムはシドニーと比較して6割程度安く、ブリスベンと比較しても3割程度高い価格帯ですから、現状と今後の成長を鑑みるとまだリーゾナブルに感じました。
ただし、今後の住宅価格は当然に上昇していくと考えられます。実際、市街地から郊外の住宅地にかけて建設ラッシュが続いていますし、街を歩いていても郊外を移動していても、建築ラッシュが顕著です。オーストラリアのファイナンス新聞では「年間に住宅価格が2割程度上昇する」旨の記事がありました。また直近の1ヶ月で2.3%も不動産価格が上昇していると現地の人から話を聞いています。2017年頃より長期的な低迷は完全に終わっており、経済も上昇気流だと地元のコンサルも話をしていました。
因みに2019年1月時点でのメルボルンの賃貸住宅空室率は2.2%で、2018年11月時点の1.9%と比較しても住宅供給が徐々に追いつきはじめています。

【交通
メルボルン市内のトラムとバスの料金はゾーン制です。中心街は「ゾーン1」、その周りが「ゾーン2」です。
「ゾーン1」はトラムに限り無料です。「ゾーン1」から「ゾーン2」に移動する場合は、バスやトラムの運賃が4.3ドルです。メルボルン観光をする場合の多くは「ゾーン1なので無料です。街中はトラムが縦横無尽に走っており、駅の間隔も近いため、ちょい乗りでも便利です。また、メルボルン市街はなだらかな丘陵地にあり、平地と坂が混在しているため、このちょい乗りトラムは快適でした。

【経済】
メルボルンはビクトリア州に属しています。ビクトリア州はオーストラリアの3%程度の面積であり、国内経済の22%を占めており、経済規模はシンガポール、香港、ニュージーランドを凌ぎます。おかげでビクトリア州はオーストラリアの州で唯一、世界経済の最高ランクであるAAAの信用各付けを得ています。この2つの信用各付機関から最高の格付けは、過去10年以上維持しています。
現在、メルボルンの人口は490万人程度ですが、過去10年間で他の都市よりも急速に人口を増やしています。このペースで成長すると、2030年までにはシドニーに代わりオーストラリア最大の都市になると言われています。
なお、人口急増の背景は移民です。過去数年で約70万人がメルボルンに移住し、その約半数は海外からでした。

【治安】
オーストラリアの他の都市と比較しても、治安はとても良いと思います。海外旅行に慣れていない人でも、安心して観光を楽しめます。
ただ、多国籍国家という特徴のため、日本とは違う雰囲気が漂っています。人通りが多くても、駅の周辺や路地裏、マクドナルドなどのファーストフード店などでは注意は怠らないほうが良いでしょう。犯罪にはならないと思いますがホームレス絡みのトラブルは多いと推測できます。

【アート】
最後は、アートという側面から。
メルボルン市内には「ウォールアート」が施されているエリアが多数あります。建物の間の路地では、多くの観光客がカメラ片手に思い思いにアートを楽しんでいます。一躍有名になったイギリスのアーティスト、バンクシーの作品もあるとのことで探しましたが、残念ながら見つけることは出来ませんでした。
郊外にかけて芸術家や音楽家が多く住んでおり、アートの感性が磨かれる都市だという印象です。

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profile

hayashima_biznavi
早嶋 聡史 氏
(はやしま・さとし)
株式会社ビズナビ&カンパニー 代表取締役社長
株式会社ビザイン 代表取締役パートナー
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会 理事
Parris daCosta Hayashima k.k. Director & Co-founder

長崎県立長崎北高等学校、九州大学情報工学部機械システム工学科、オーストラリアボンド大学経営学修士課程修了(MBA)。
横河電機株式会社の研究開発部門(R&D)にて産業用ネットワークの研究に従事。MBA取得後、海外マーケティング部にて同社主要製品の海外市場におけるブランド戦略・中期経営計画策定に参画。B2Bブランディングの先駆けとして後に知られるようになったVigilanceという力強いブランドキャンペーンを実施。退職後、株式会社ビズナビ&カンパニーを設立。戦略立案を軸に中小企業の意思決定支援業務を行う。また成長戦略や撤退戦略の手法として中小企業にもM&Aの手法が重要になることを見越し小規模のM&Aに特化した株式会社ビザインを設立。更に、M&Aの普及活動とM&Aアドバイザーの育成を目的に一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)を設立。近年、アナログの世界に傾倒すること、価値を見直すことをテーマに、自ら高級スイス時計のブランドであるパリス・ダコスタ・ハヤシマを設立する現在は、売上規模数十億前後の成長意欲のある経営者と対話と通じた独自のコンサルティング手法を展開。経営者の頭と心のモヤモヤをスッキリさせ方向性を明確にすることを主な生業とする。
【著書・関連図書】
できる人の実践ロジカルシンキング(日経BPムック)
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