●居心地の良いお店

「ワタシがイキル。はじめよう。○○クルー」

これはあるファーストフード店の従業員募集用のキャッチコピーです。このお店はどの町にもあるので、仕事の途中につい立ち寄ってしまうのですが、なぜか居心地が良いのです。クルーの方の店内に流れる声や無駄のない立ち居振る舞いが、お客の居心地を良くさせているのです。アルバイト生を短期間で同じレベルまで磨き上げる接客訓練、マニュアル教育はさすがです。

また、駅中のカフェでは、朝コーヒーを飲んで出るお客に「気をつけて行ってらっしゃいませ。」と声をかけています。これもマニュアルにあるのでしょうが、コーヒー1杯200円の客にそこまでとうれしくなります。

●よそ行きの言葉や顔

自社の従業員の接客態度に悩む経営者は多く、「ウチの従業員は、どうしていつまでも田舎っぽいのか」といった相談を受けます。

従業員の方にお会いしてみると、人柄は良いのですが自宅から出て来たそのまんまなのです。よそ行きの言葉やよそ行きの顔になっていないのです。よそ行きの顔は、口角を少し上げて笑みをキープするだけで簡単に作れるのですが、職場の雰囲気も自宅の延長になっていて、新しい自分をつくる場になっていないのです。

●職場は舞台

スマイルプロデューサーの山村美穂子氏は、旅館、ホテルや病院の人材教育を得意とする方ですが、単に接客の技術訓練ではなく、職場を舞台にみたて、俳優のように演技をする指導をしています。山村氏の指導を受けると、みなさん1日で変わります。首がすっと伸び顔に自然な笑顔が現れます。

熱心に5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)運動に取組んでいる工場に行くと、作業中の若い工員の方が「いらっしゃませ」と挨拶をしてくれます。社長さんに、みなさん感じが良いですねと伝えると「あたりまえのことです」とのお返事でした。

経営者の役割は、職場を従業員の方が気持ちよく「演技」できる舞台として整えてあげることではないでしょうか。

●感謝の言葉でお返しを

コンビニやファーストフード店、居酒チェーンなど若い人が中心の業界のほとんどは、低賃金や過密スケジュール、無礼な客と厳しい職場環境です。ブラック企業として指摘されている企業の多くもこの業界です。だからせめて私達は、お客としてサービスを受けたときには、「ありがとう」「ご苦労さま」「ごちそうさま」と感謝の言葉でお返ししたいものです。

若い人の職場がいつも「ワタシがイキル」場所であって欲しいと願います。

 

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雪野佐喜子 
(ゆきの・さきこ)

大分県臼杵市出身 中小企業診断士。『ビジネス支援チーム7福人』代表。金融機関、中小企業に勤務の後、社団法人大分県地域経済情報センター、財団法人大分県産業創造機構で中小企業支援業務に従事。平成23年4月独立。中小企業診断士事務所『ビジネス支援チーム7福人』を開業。創業、経営革新、IT活用、施策活用などのコンサル活動を行っている。一般社団法人大分県中小企業診断士協会 副会長趣味はテニス、登山、飲酒、最近は短歌も。