売るための仕組みづくり

マーケティングとは何でしょうか。ネットで調べてみたら、「顧客やお客が求めるサービスや商品を作り、その情報を届けて、顧客やお客に満足のいくように得られる活動のこと」と出ていました。また、違うサイトには「製品、流通、価格、販促・広告、これら全ての要素をいかに組み合わせるかがマーケティングである」と説明されていました。要は「売るための仕組みづくり」ということです。

ずっと昔、こんな仕事が持ち込まれたことがありました。「もっと目立つ広告を(言葉にはしませんが、低予算で)提案して欲しい」という依頼です。クライアント(広告の依頼者)は、目立つ広告で見込み客の注目を集め、そのことで来場者数を増やし、結果的に売上増を狙いたいと思っているわけです。

はっきり言うと、これ、考え方が根本から間違っています。クライアントは売上向上が最終目標です。だったら、まず広告以外のことで、売れるための仕組みをつくるべきです。今、お客さんが来て商品を購入している理由は何なのか。大勢のお客さんが来るのに、売上げが思うように伸びないのはなぜなのか。なぜ、もっと多くのお客さんが来ないのか。そこを考えるべきです。答えは意外と簡単かもしれません。こういう研究を何もせずに、目立つ広告さえつくればお客はやって来る(売上げは上がる)という安易な考え方は間違っていると思います。

こういう依頼は、僕とクライアントの間に位置する広告の仲介者からもたらされます。仲介者も自分の売上増を狙っています。それで「そういう考え方は間違っています」とはお客様であるクライアントに言いません。何かしらの広告物をつくって、手数料を稼がなければいけないからです。

それで僕を呼びつけて、「なんか目立つコピーを書け!」と物腰柔らかく言います。こういう時に僕がどう考えていくか、そのプロセスを今回はお話しようと思います。

僕の広告作法(広告づくりの方法)

マーケティングリサーチ(市場調査)によるデータがない以上、僕は自分の体験をもとに考えていくしか方法がありません。クライアントのお店に行くことが可能であれば実際に行って、体験したり、観察したりします。また、クライアントの同業他社にも行って比較してみます。こうすると、いろんな長所や欠点が見えてきます。要は、長所を伸ばして欠点を是正していけば、クライアントのお店はより魅力的なお店になり、結果的に売上げにつながっていくはずです。

だから、僕は商品やサービスについて、とても文句が多い意地の悪い客です。最近は年齢を重ねたためか、随分丸くなったと言われますが、直接口に出して文句を言わなくなっただけで、いろんな場面で厳しいチェックをします。僕の仕事は、こういう訓練をしておく必要があるのです。

僕のやり方の弱点は、調査する人間が少ないことです。他人は僕と同じように思わないかもしれません。あるいは僕とは違う視点でお店を評価しているかもしれない。そういうリスクがあることは確かです。それでもデータが何もないよりはいいと思っています。

まず広告目標を設定する。次に目標に近づけるようなアプローチを考える。これが僕の広告のつくり方の基本です。だから、僕がつくった広告に派手さはありません。もちろん、その他の要素である写真、イラスト、デザインの素晴らしさで目立つことはありますが、流行語になるようなコピーを書いたことはありません。でも、確実に広告目標に近づいているという自信があります。半面、売上げの短期向上という即効性はないかもしれません。

広告はマーケティングの一つの手段ですが、すべてではありません。自社の何をアピールすべきなのか。広告目標を考えたうえで、広告の発注をお願いしたいと思います。

profile



一丸幹雄 
(いちまる・みきお)

昭和30年、大分県杵築市生まれ。

日本大学法学部新聞学科卒業。㈱宣伝会議「コピーライター養成講座」一般コース・専門コース修了後、東京の広告制作会社に勤務。昭和56年にUターン後、大分市の広告代理店、制作会社に勤務。県内各企業の広告や行政の広報、雑誌の取材・執筆を手がける。 現在、フリーランスとして活動中。