前編・後編と、『心をゆさぶるWebテキスト』のポイントになりそうなことを記してきました。今回は総括として、情報社会の変遷と併せてWebテキストに求められるものを考察していきます。

Web上に真っ先に登場した情報ツールといえば…誰もがご存知のウィキペデア。どんな検索ワードを入力しても、ウィキペディアがトップ表示されるほど、当時から膨大かつ細部にわたる情報が網羅されていました。そして、常に誰かが新鮮な情報を書き込み、量と質を向上させ現在も日々バージョンアップしています。

そんなウィキペディアが、一時期からパッタリと検索ランク表示されなくなりました。私が思うに、「NAVERまとめ」登場は要因として外せません。
ウィキペディアからNAVERまとめへの移行期、そしてその後、ネット上にウヨウヨと増幅したまとめ(キュレーション)サイト(※1)ブーム期が、ネットユーザーの検索意識を変えるきっかけになったと思っています。主観です。
※1 ウィキペディア|まとめサイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88

欲しい情報を自ら探して得るウィキペディアと、NAVERまとめやキュレーションサイトは、劇的に違っていました。
何が違うのか。
それは、自分が欲しているよりも、たくさんの情報掲載先を案内してくれてリンクで簡単に飛べるという点。目的達成型の検索方法から、割と的確に「こっちにも載ってるよ」情報がずらずらと並ぶ、一種のサービス精神すら感じられるようなリンク集閲覧方法にシフトしました。
この頃、おそらく多くの人が、検索しても行き当たらない「情報量の奥行き」のようなものをおぼろげにも感じたはずです。

Googleアルゴリズムはいつでも『ユーザビリティ』と『よりよい質』を求めてアップデートしてきました。ウソや誇大表現、誘導的な煽り…見たものを陥れようとするコンテンツを排除し、閲覧者の納得と満足を促す情報を評価するという方向性は変わっていません。

しかし、あまりにもシェアを急速に拡張し過ぎたキュレーションサイトは更新が追いつかず、記事の質を落としてでも掲載することにこだわり、制作側はそれに慣れ、結局は良からぬ健康系記事の社会的抹殺(※2)事件?をきっかけに影をひそめます。そして、またたく間にオウンドメディア(※3)へシフトしました。

※2 参考サイト:東洋経済オンライン|「炎上」が暴いたDeNA劣悪メディアの仕掛け なぜニセ情報が大量の読者を獲得したのか(2016年公開、2022年12月時点)
https://toyokeizai.net/articles/-/147045

※3 ウィキペディア|オウンドメディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2

インターネットを一般人が利用し始めておよそ20年。端末の主流はパソコンからスマホやタブレットに変わり、今やネット情報は生活必需品です。この間にユーザーは、若干の危機感の煽りや盛り気味のエンタメ記事へ案内されることに、すっかり慣れてしまいました。シャワーのように降ってくる情報を流し見して、瞬時に納得してしまい、見たままの情報を受け入れやすくなっているように思います。
冷静に考えればわかるようなウソですら秒速で拡散し、後にトラブルとなる。そこに残念ながら悪意はなく、「考える」というワンステップが欠落しているだけです。

前回まで、「相手の思いを想像し、ニーズを明確にして文字にしましょう」と、ユーザーファーストマインドをくどくど連ねてきましたが、響く・刺さる言葉には生身の気持ちがやはり不可欠です。
「は? テクニックじゃなくてそこかよ?」と言われそうですが、経験したからこその感情が真実味を帯びさせ、そこに信頼性を生みます。
マイノリティの優劣ではなく、個別具体的で、寄り添える感情をより深く堀って文字にすること。何を言ったところで、心をゆさぶるには心に訴えるものがなければムリですよ、至極当たり前のことですが。

それでも、自分だけの経験や感情で文字にするには限界があります。
だから、マーケティングが必要なのです。

私の手元ではここ数年、前述したオウンドメディア記事以上に、現地ヒアリングやインタビュー取材の依頼が増えています。きっと、情報の中に新鮮味や特異性、ドキュメンタリー性のようなものをユーザーは求めているのです。
たとえば、某青汁のヒューマンドラマ仕立てCMのように、表面的には従来品と変わらない新開発品があったとして、成功…だけでなく失敗や悲しい出来事、苦労、悩み、出逢い、そして閃き…、秘話を知って共感したいのです。

購入・利用してほしそうな人の気持ちや負の感情まですべてリサーチして、そこで初めてユーザーにとっての良さを提供できるのだと思います。幅広く感情を聞き出しましょう。そして、その感情に至るまでを書き手が考えて、描写するようにいちいち記してあげる
そうすることで、考えることを一時期放棄してしまった人でも、自分の感情になぞらえるように文を読み、共感してくれるでしょう

文章の上手いヘタなんて、そんなことより(どうでもいいわけではないですが)、気持ちの変わり具合や評価を素直に書くことを優先したほうがイイです!
何度も書いて更新していれば、文章は上手くなります。それでも苦手意識が勝っている人にアドバイス。試しに、誰かに語りかけるような口調をそのまま文字にして、丁寧語に文末を書き換えてみると、意外と良文ができ上がるかもしれませんよ。一度書いた後で、繰り返し部分や不要文を削れば、もっと良くなります、きっと。

【今回の脳内開放の法則】
「読み手に考えさせるのではなく、心の描写を細かくいちいち書いてあげれば、素直に共感してくれるはず!」

ちなみに、参考元としてウィキペディアサイトを載せていますが…ウィキペディアに信ぴょう性を求めるのはNGです! あくまで参考です。それが証拠に、一時期更新されていない単語にはアラート(注意喚起)が出ます。
情報は常に変化し、それが確固たるものではないと教えてくれる意味で、ウィキペディアと運営者の姿勢に感服します。

次回はいよいよ最終回。ライターとして何を皆さまに発信することができるのか。お伝えしたいことを脳内こねまわして、自分の感情ゆさぶって泣きそうですが。次号までに何とかします、乞うご期待。

profile

竹林みか
たけばやし・みか:大分県宇佐市生まれ。
ネコがいて甘いものがあれば、ある程度の苦境を乗り越えられる“主に主婦。ライターとして仕事を請けつつ、家の中では家事最優先。スキマ時間でデスクに向かい、モニターを睨みながら鬼の形相でキーボードを叩く。原稿の構成に多くの時間を費やし、納期ギリギリまで文章をこねくり回して自分を追い詰めるタイプ。
常に最高と最低の状態を想像して、メンタルの疲弊をブロックする習性がある。想像力&妄想癖強め。女性起業家プロジェクトIGCメンバーに加入し、ライター業ほかさまざまな活動を通じて事業経営のカタチを日々勉強中。
関東圏Web制作会社の依頼で執筆を重ね、現在は県内お取引が中心。「人の縁・かかわり」を育みながら、出前講座やフリーランスの働き方を語る講話の依頼をこなす。
平成29年よりスタートした「大分県在宅ワーカー(現:テレワーカー)養成講座」内ライティングコース講師を5期に渡り担当している。
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