これまで11回に渡り、ライターとして、またライティング講師として考える日々の脳内をつらつら綴ってまいりました。
いよいよ、無事に最終回を迎える安堵と達成感をかみしめながら、総括にまいります。

私の手元ではここ数年、取材の仕事が圧倒的に増えています。ご依頼の真意を考察し、取材日程を調整し、出かけ、そして会った方との限られた時間で伝えたい思いを探り引き出して、構成を練りあげ、文章化する…というのが、取材における一連の流れです。
この作業を繰り返すたびに、「みんな自分で書けばいいのに」と、己の食いぶちを放棄するような考えに至ります。本心です。

特にインタビュー原稿の依頼を受けた際は、「自分の言葉で自分らしく語るのが一番伝わるやろうになぁ」と、本気で思います。
だって、いくら私が丁寧に話を聞いたところで、その事業の中身や、社長はじめ企業の皆さまのバックグラウンドを含めた熱意や心意気を、もれなく文章に詰めこむには限界がありますから。
もちろん、お目にかかる前にはしっかり情報収集をします。ですが、言ってしまえば、部外者の私にとっては取材で聞いたことが文章の軸であり、発せられた言葉の裏側にある心意は、妄想の域を出ません。

実はここ3か月ほど、原稿依頼をいただく合間でWebライティング講座の講師業も行なっていました。6年連続して関わっている講座なのですが、レクチャーする内容は年々増え、さらに細かくなっています。そして、これまでにたくさんのWeb情報を見ているためか、受講者さんの飲み込みは早く、勘の良い方が増えているように感じます。

情報がサービスとして提供され、デジタル端末が無ければ生きていけないような社会の仕組みに変わりつつある中で、誰もが必然的に「経験し慣れる」を繰り返して、情報収集精度を今後も底上げしていくのでしょう。

しかし、情報を得る側と発信する側では、文章の捉え方がまったく違いますよね。
読みづらい文章だと思うことはあっても、「読みやすく書け!」と言われると、できそうでできない…。
発信する側の思考が身に付けば、それが文字であろうが言葉であろうが、相手に対して素直に受け取ってもらいやすくなるだろうし、意思疎通を図りやすくなるし。あらゆる物事が上手くいくための要因として、書くスキルは大きいと思っています。

とはいえ、やはり企業のみなさんは本業に忙しい。
じっくり考える、精査する、思いとどまる。ここに割く時間が圧倒的に短くなった現代で、情報ばかりが増えていき、時短や効率を求められがちです。
商品やサービスへの思い、構想、未来予想 etc…それを発信する場があったとしても、正直に正しく、かつ魅力的に伝えることにだけ注力するのは、普段から文章を書かない方は特にハードルが高く感じられるでしょう。きっと、時間もかかります。

たとえばバックオフィス業務のように、人が長らく培ってきた経験が情報化とビッグデータの解析によって品質担保され、汎用性が高まった仕事が増えています。ライターも例外ではなく、最近ではAIがWeb上の塵文章を寄せ集めて、それっぽい文章を作るなんてこともできる時代になりましたからね。
汎用ツールの種類も機能もさまざまですが、やはり人間は欲張りで、一子相伝や職人技のような、とっておきのオリジナリティであったり、誰でもできること以上の「価値」を欲してしまいます。文章でいえばきっと、ビッグデータには存在していない情報であり、読み進める中で感じられる「その人っぽさ」なんだろうなと思うのです。

コロナ禍と働き方改革の急加速で、分業・協業・ジョブ型人事へ移行する企業も増えてきました。業務が進まないまま時間を溶かしてしまうくらいなら、内製にせず専業者に任せればいいのです(セールスやテキストが不得手な企業様あってのWebライターです)。
それとは別建てで時間をかけて、「うちの商品キャッチを出させたら、やっぱあの人っしょ」といわれるような『書く専(=担当者)』を社内で育てることをオススメします。やはり、当事者が発する言葉、熱意に勝るものはありませんから。

誰かの一節に深く感動したり、自分が発する言葉で誰かが行動し喜んでくれたり。そんな、人らしさ・感情を揺さぶるようなコンテンツスキルは、傍目にレベルを図れるものではありませんし、自信満々に自分の文章を披露しづらいですよね。

たとえ仕事の場に限らずとも、人と何かしらの関わりを持ちながら時間を過ごす中で、自分の思い出や感情とリンクさせながら相手を想って文字を発する。
それが上手でなくても、文字の向こう側にいる人のことを「考える・調べる」ことで疑心や誤解を避け、相手との感情の乖離を埋めることができるでしょう。

考えて書けば書くほど、発信すればするほど、文章の精度もスピードもアップします。
文章力こそまさに、文字があふれるネット現代の中で、マストかつ究極の生きやすさをもたらすスキルだと信じていますし、誰かの胸にいつまでも残るような共感を生みだすパワーを秘めていると感じています。

そのうえで、自分なりの結論を持ち、必要以上に情報に振り回されない、頼りすぎないことが大事なんだろうなと思います。

ここまで、えらそうに思いを語ってきましたが、ライター歴16年目の私もまだまだ修行の身。これからも、たくさんの人に逢い、共感の思いを文字に乗せてお届けできる仕事人となるべく、活動していく所存です。
文章に関するお困りごとは、ぜひご相談ください(笑)。社内の人を発信者にするためのセミナー等々、ご要望に応じて実施いたしますので、どうぞお気軽に。

地元大分で細々と活動する1ライターに、多くの企業人の方々が集うサイトで掲載されるチャンスをくださり、そして皆さまにご覧いただいたことに感謝いたします。
1年間、ありがとうございました。

profile

竹林みか
たけばやし・みか:大分県宇佐市生まれ。
ネコがいて甘いものがあれば、ある程度の苦境を乗り越えられる“主に主婦。ライターとして仕事を請けつつ、家の中では家事最優先。スキマ時間でデスクに向かい、モニターを睨みながら鬼の形相でキーボードを叩く。原稿の構成に多くの時間を費やし、納期ギリギリまで文章をこねくり回して自分を追い詰めるタイプ。
常に最高と最低の状態を想像して、メンタルの疲弊をブロックする習性がある。想像力&妄想癖強め。女性起業家プロジェクトIGCメンバーに加入し、ライター業ほかさまざまな活動を通じて事業経営のカタチを日々勉強中。
関東圏Web制作会社の依頼で執筆を重ね、現在は県内お取引が中心。「人の縁・かかわり」を育みながら、出前講座やフリーランスの働き方を語る講話の依頼をこなす。
平成29年よりスタートした「大分県在宅ワーカー(現:テレワーカー)養成講座」内ライティングコース講師を5期に渡り担当している。
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■女性起業家プロジェクト「iGC」プロフィール
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