頭文字をとって『GAFA(ガーファ)』と呼ばれる米国の企業4社がある。『Google』、『Apple』、『Facebook』、『Amazon』だ。4社の時価総額合計は、日本の株式市場全体の半分を占めるほど巨大だ。
そのGAFAの中で、最も若い企業がFacebookだ。会社も社員の平均年齢も若いが、CEOのマーク・ザッカーバーグも34才と若い。

2010年に公開された映画『ソーシャル・ネットワーク』では、「性格がサイテー」と恋人に振られたモテない男、マーク・ザッカーバーグが描かれている。マーク・ザッカーバーグは、腹いせにハーバード大学のサーバーをハッキングして女子大生の証明写真をランキングする『Facemash』というサイトを立ち上げて注目を集めるが、総ての女子大生の嫌われ者になる。

しかしそんな能力を買われて、コミュニティサイト『ハーバード・コネクション』の制作を同大学のエリート学生に依頼された。マーク・ザッカーバーグは、依頼されたサイトのアイデアをヒントに、学内に向けた『The Facebook』というサイトを作る。アイデアの盗用だと依頼した学生たちは激怒するのだが。

その後、『Napster』の設立者のアドバイスでFacebookと改名したサイトは急成長を遂げる。この映画は、批評家や観客のどちらからも大絶賛され興行収益も記録的だった。詳しくは映画で見て欲しい。

本来であればFacebook自体のイメージダウンにも繋ががりかねない内容の映画だったにも拘わらず、Facebookの知名度は一気に上り、同年のサイトアクセス数はGoogleを抜き世界一に。2012年にはアクティブユーザー数が10億人を超え、現在では他の人気SNSを凌駕して、SNSの巨大企業へと成長している。

Facebookのセールスポイントは、登録ユーザーの趣味や趣向などの細かい個人属性やソーシャルグラフと呼ばれる人間相関図だ。広告主にとってFacebookは、これらの情報を元に広告や告知などを簡単で格安に展開できる広告メディアであり、ブランディングメディアでもある。今後、AIの進化で趣味や趣向に合った商品の告知や、必要なタイミングを見計らった告知などができるようになれば、ユーザーの欲しい情報が手に入るメディアとなり、その広告効果はより高いものになる。

そんなFacebookは日本の企業が最も見習うべき働き方を実践している。
世界中から集う2万人近い優秀な頭脳をストレスなく回転させて画期的なアイデアやイノベーションを引出そうと、柔軟な組織やワークフローを達成しているのだ。

Facebookの建物や敷地内には、各所にベンチやソファーがあり、日差しの差し込むテーブルがあり、並木道がある。そして思い思いの場所で、ノート型パソコンやタブレットやコーヒーを片手に社員同士が楽しそうに談笑している。この談笑しているように見えるものも仕事なのだ。Facebookでは好きなスケジュールで働くことができるし、出社する必要もない。逆に、出社して12時間汗水流して働いても、結果を出さなければ何の評価もされない。
それがFacebookなのだ。

Facebookでは、世の中にインパクトを与えるアイデアを生み出すことを重視しているという。そして、良いアイデアを生み出した人が中心になってプロジェクトメンバーを集めることができる。極論すれば好きな人と仕事ができるのだ。さらに、経験豊かなマネージャーのサポートを得ることもできる。

そうして、認められたアイデアは素早く運用されていく。とにかくやってみてユーザーの反応を見て数値化し、成果を精査し、AIが査定などに活かす。また、それらの経験や結果を蓄積していくと、AIのアドバイスをヒントにより確度の高いプロジェクト運営が出来るようになる。

人は毎日触れている人物に親近感を覚えて、安心感や信頼を置く。かつては、新聞やテレビニュースが信頼できうる情報と考えられていたが、昨今では非常時以外にもSNSで信頼の高い人が発信する情報を集めることが浸透してきている。話題になっているものに興味を持って、体験したり買ったりするのは、昔から続いていることだが、そんな行動基軸や購買基軸がSNSに左右され始めている。

ネットワーク社会となり、会社の人間関係に拘束されずカフェや自室などで仕事ができたり、核家族や単身で暮らす人が増えている。そうして社会や地域や家族との関係が希薄になった人には、SNSは承認欲求が満たされたり、自己肯定をする場所として好都合だ。これからの社会において、SNSに求められている役割は大きい。
Facebookは、集めた天才たちのシナプスからそんな社会のニーズを引き出して、世界をFacebookに釘付けにしようとしているのだ。

■毎月更新されるこの連載では、今後時代がどう変化するのか、最先端の動向や技術を基盤に深く読み解ければと思う。

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佐藤豊彦(さとう とよひこ)
東京を拠点に企業やNPOなどのコンサルタントとして、マーケティングやブランディングやメディア戦略の提案などを手掛けている。オーナーとしてプロバスケットチーム・大分ヒートデビルズ(現・愛媛オレンジバイキングス)の立ち上げに関わったり、大分県立総合文化センター(現・iichiko総合文化センター)の企画制作などを担当するなど大分の仕事も多い。
イラストレーターとしてもSatoRichmanのペンネームで活動し、田中康夫氏や林真理子氏など多くのエッセイや小説などに作品を提供したほか、popeye他多くの雑誌や、UNICEF世界版カード、丸ビルのビジュアル、MasterCardのPricelessキャンペーン、氷結果汁やNEXCO東日本のTVCM、伊勢丹のディスプレイ、高島屋のカードキャンペーン、三越の広告などで活躍。また、クリエイティブディレクターとしてnikeやMAZDAやFORDや小学館などのWEBサイトのマーケティング戦略の提案、コンテンツの提案、全体のディレクションやコンテンツの制作やデザインを担当。
TBSからスタートしたポッドキャスト番組AppleCLIP(インターネットを使ったラジオ放送)の制作ディレクター兼パーソナリティを担当している。