いつの時代になっても、年配の人からは「最近の若いやつは……」という嘆きとため息が漏れるものですが、最近の40~60代の人から見る20代~30代は、20年前の同世代が嘆いたようすとは少し異なるようです。

というのも、今日までの20年間、つまり、1994年からの20年間とその前、1974年からの20年間では、あまりに時代の変遷の内容が違いすぎます。

1974年といえば高度成長期のイケイケどんどん! 東京オリンピックから10年、あらゆるものは右肩上がりで成長し、日経平均も74年の終値3,817円から89年の38,915円へと頂点を極め、まぁ、最後94年末は19,723円と弾けてしまいます。といっても現在よりも高い水準です。

それに比べ、バブルが弾けた1994年からの20年間は、景気が低迷しているなかで、インターネットが登場し、96年、ヤフージャパンが創業され、拡大成長し、いまに至ります。

対照的に雑誌・書籍の売り上げは、96年、約2兆6564億円と過去最高に達し、その後、減少。最新のデータでは2013年の1兆6941億円となっています。

そんななか携帯電話もただの通話端末からインターネット端末へと進化していきます。そのポイントがiモードの登場です。1999年2月22日から始まったiモードは世界で初めての携帯電話によるインターネット・サービスでした。このサービスは若者を中心に一気に広がっていきます。

1999年、高校生だった若者は、親指だけで平気で1000文字入力できるようになります。そうして、活字を書く場面、読む場面が、紙から携帯へと移っていくのです。

その若者たちは15年後のいま、30歳過ぎ。その下の世代は、よりいっそう携帯電話が身近な世代となっていきます。

バブルが弾け、失われた20年。遊びと言えば、お金がかからないネットと携帯電話が一般的。そしてさらに、20代後半から下の世代、つまりいまの28歳は1999年の時点で中学3年生、彼らにとってはまさに携帯電話は、パーソナル端末として身近なデバイスとなります。そんな彼らは、“デジタル・ネイティブ”どころか、すべてをモバイルで済ませてしまう“モバイル・ネイティブ”なのです。

そして、その年代以降にはさらに追い打ちをかけるように「ゆとり教育」が施されます。そう、土曜日は休みになり、“円周率は3”として、「3.14」が丸められて教えられた世代です。

どう考えても年配の方々が想像できる青春時代ではありません。「最近の若いやつ」は、まったく異なった年月を積み重ねて大人になっているのです。

そんな彼らと語り合う。ましてやモノを作って売るということが、どんなに大変なことか。その時代背景を考えただけで難しいことがわかるはずです。

しかし、それを克服するのもまた、進化するデジタル技術です。

そもそも人間はアナログな生き物。デジタルで分析するのにも限界がありそうですが、現状、私たちの周囲はますますデジタルで囲われていきます。

今回から始まるこのコラムでは、そんな“モバイル・ネイティブ”を公私共々どのように攻略していくべきか、みなさんと一緒に考えていきたいと思っています。

 

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田代 真人
(たしろ・まさと)

編集者・ジャーナリスト。(株)メディア・ナレッジ代表。駒沢女子大学、桜美林大学非常勤講師。1986年九州大学卒業後、朝日新聞社、学習研究社、ダイヤモンド社と活躍の場を変え、女性誌からビジネス誌まで幅広く取材・編集。著書に『電子書籍元年』(インプレスジャパン)、構成作に『もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら』(日経BP社)がある。