[chapt.02]みらっこ(大分)
第2回目に紹介するゆるキャラは、おなじみ2010年に大分みらい信用金庫のイメージキャラクターに就任した「みらっこ」です。
さっそく、みらっこのプロフーィルをチェックしてみましょう。

みらっこは、北国の海に浮かぶラッコ王国の、ちょっとノンキな王子様。夢中でおやつを食べているうちに別府湾まで流れつき、大分が気に入ってそのまま住み着いている…だそうです。
かなりノンキなコですねー。

ラッコがモチーフの丸みを帯びた柔らかいフォルムと、胸に抱えたピンクのハートがなんとも愛らしく、登場するやいなや、一気に人気者に。現在はみらいしんきんの顔としてCM出演やポスター、通帳、カレンダーなどの販促物に登場するのはもちろん、「ゆるキャラ大集合!」 的なイベントでも活躍しています。
みらっこ登場のCMがコチラ。
https://www.oitamirai.jp/100th/oitamirai_100th_cm/
ところで、みらっこのプロフィールを見ると、「親友」の欄に懐かしい「ざうるすくん」の文字が!
ざうるすくん、ご存知ですよね? おにぎり頭で胸元に黒い蝶ネクタイをつけた、黄色い恐竜です。
こども向け預金「ざうるす」通帳と共に、1991年に誕生したざうるすくん。彼のプロフィールは「古代の志高湖付近にあった卵が鶴見岳の噴火で押し流され、(なぜか)大分みらい信用金庫に改名前の別府信用金庫の地下金庫から発見された」という設定。ざうるすくんの趣味の一つが「貯金」だったというのも納得です(笑)

ここで注目したいのが、一つの企業が割と短期間で新たなキャラクターを作っているという点。
恐竜なのにテレビCMでフルスイングを披露するなど、大分県内でもそこそこ知名度があったであろう先代・ざうるすくんに代わり、まったく別の角度の可愛さを持つ2代目キャラ・みらっこの登場。しかも今回もイラストだけで終わるのではなく、着ぐるみまでしっかりと準備し、商品やノベルティー、イベント参加など企業の顔として積極的な活躍ぶりが際立ちます。

一般的に、キャラクターを立てたことによる費用対効果を測るのは難しいと言われています。
ゆるキャラブームに便乗し、内輪ウケだけの延長線上で生まれた不幸なキャラクターは特に要注意です。
特に税金が投入される行政がらみのケースだと、「PR活動といっても、ゆるキャラ単独だけでなく“プラスワン”の人員が必要だった」「熱意のある担当者が部署を異動した」など超内部的な理由で、すぐに露出の機会が減ってしまい、結果的に「お金のムダ遣いだ!」と批判の的になってしまうこともあるからです。

明確な目的やビジョンを持ち、担当者さんの情熱(これが一番大事!)が、ゆるキャラの人気を支えます。
みらっこには県内各地たくさんのお友達もいることだし、ますますの活躍を期待します。
余談ですが、以前取材した某外郭団体のキャラクターの話。
もともと“つがい”の着ぐるみで活動していましたが、活躍の場が減少し、しばらく倉庫で冬眠していたそうです。ところが十数年後、新たな組織が発足したことを機にキャラクターとして再び脚光を浴び、メディアの露出も増えてきました。
さっそく取材を申し込みましたが、当日取材場所に現れたのは男子のキャラクターのみ。働き方改革による“中の人”問題もありますが、昔の写真に写る女子のキャラクターは完全に元カノ扱い。堂々とソロ活動を宣言していました。
その彼を間近で見ると、経年劣化したことで以前あったパーツがなくなり、髪の色も変わってしまい……って、あれ? この髪色、元カノの髪の毛!
再デビューにあたり、しれっとキャラクターがすり替えられた事実に気づいてしまいましたが、そこにはさまざまな事情があるのだろうと、あえて触れませんでした。
ある意味サステナブルな話ってことで。

profile

相原 利衣子
あいはら・りえこ:宮崎県都城市出身。大分市在住。株式会社Oulu(オウル)編集者、プロデューサー。大分の出版社で22年雑誌制作に携わり、2021年に編集プロダクション「Oulu」を設立。webメディアや新聞、パンフレットなどの紙媒体から、パッケージやグッズなどのプロダクトデザイン、ラジオ構成作家まで、「丸投げ、よろんで」の精神で活動中。趣味は飲酒、飲食全般で、初対面の人とも陽気に酒を酌み交わせるのが特技です。