※メイン画像は左から高野山の「こうやくん」と、今山大師の「こだいっちゃん」。正統派お坊さんキャラです

2010年に開催された「平城遷都1300年祭」を覚えていますか?
奈良に平城京が誕生して1300年を迎えることを記念した事業でしたが、イベント内容より、マスコットキャラクターとして2008年に登場した「せんとくん」の方が強く印象に残っています。

せんとくんの生みの親は、彫刻家の薮内佐斗司氏。
大分ではJR大分駅にある彫刻作品「ぶんぶん童子」でお馴染みですよね。
せんとくんはゆるキャラブームの真っ只中に誕生しましたが、「童子に鹿の角を生やした」斬新なデザインで、それはそれは人気がありませんでした。
その少し前に登場し、ゆるキャラブームの火付け役となった彦根城の「ひこにゃん」のような可愛らしさを期待していた人たちからは、「可愛くない」「キモい」などの声が上がり、違う意味で世間の注目を集めました。

市民団体からはキャラクターの白紙撤回が求められ、さらに奈良の一部仏教界が「仏様に角を生やすなんてけしからん!」と異議を唱えるなど大炎上!
その結果、市民団体からは鹿と平城京の朱雀門をモチーフにした「まんとくん」が、僧侶有志団代からは、聖徳太子の生まれ変わりという設定の「なーむくん」が登場しました。
当時、次々と乱立するキャラクター報道を見て、素人ながら「そんなに揉めなくても」と思ったことを記憶しております。そもそも批判の中には選考方法や制作料についても含まれていたようで、まさに「坊主憎けりゃ…」状態。
ちなみに3者は同年12月に初共演を果たし、その後せんとくんは奈良県の公式マスコットキャラクターに就任。今でも立派に活躍しています。

さて、そんな“奈良の乱”の翌年、平成27年の「高野山開創1200年」に向けて、マスコットキャラクターの「こうやくん」が和歌山県で誕生しました。
こちらは“平成の高野聖”として、法衣に托鉢笠、錫杖(しゃくじょう)など、お坊さんモチーフのごくノーマルなお姿。
この頃、旅行で高野山に行きましたが、下ぶくれのフェイスラインとまんまるおめめで、シンプルながらめちゃくちゃ可愛い! 制作サイドも、例の騒動から何か学んだのかもしれません。

高野山つながりで一つ。
私が観光大使を務める宮崎県延岡市には「蓬莱山 今山大師」があります。
江戸時代、延岡城下に広まった疫病を鎮めようと、高野山金剛峰寺から弘法大師像を勧請し、大師庵を建てたのが始まりとされています。
シンボルである日本一の弘法大師銅像は、市井の人から「おだいっさん」の愛称で親しまれており、毎年4月中旬には、町を挙げての「延岡大師祭」が行われます。
ここには、弘法大師をモチーフにしたキャラクター「こだいっちゃん」がいます。
こだいっちゃんも法衣に袈裟を羽織った姿で、正統派のお坊さんキャラです。
こだいっちゃんは多聞(ききわけ)大師ということで、多くの声を聞き分ける大きな耳がチャームポイント。かく言う私も年末に帰省した実家で、家族みんなから同時に話し掛けられる中、この原稿を書いております。耳が大きくなりそうです。

ほかにも仏教系キャラについては、お坊さんモチーフに混じって、親鸞聖人とライオンモチーフの「鸞恩(らいおん)くん」や、仏具モチーフの「おりんちゃん」などもいます。大胆かつ奥深い世界のようです。

炎上キャラの先駆け? 奈良県のせんとくん

profile

相原 利衣子
あいはら・りえこ:宮崎県都城市出身。大分市在住。株式会社Oulu(オウル)編集者、プロデューサー。大分の出版社で22年雑誌制作に携わり、2021年に編集プロダクション「Oulu」を設立。webメディアや新聞、パンフレットなどの紙媒体から、パッケージやグッズなどのプロダクトデザイン、ラジオ構成作家まで、「丸投げ、よろんで」の精神で活動中。趣味は飲酒、飲食全般で、初対面の人とも陽気に酒を酌み交わせるのが特技です。