自助努力で「人を生かす経営」を実践

——中小企業家同友会は全都道府県に拠点が設けられていますね。
佐藤 組織そのものは1957年に東京で日本中小企業家同友会(現・東京中小企業家同友会)が発足したことを皮切りに順次全国的に広がりはじめ、1969年には全国組織の中小企業家同友会全国協議会(以下「中同協」)が設立されました。大分県中小企業家同友会(以下「大分同友会」)は全国23番目の同友会として1981年6月にスタートしました。ただし中同協は、あくまでも各都道府県の中小企業家同友会の協議体です。中同協と地方組織の間に上下関係はなく、運営はそれぞれの自主性に委ねられ、組織によって独自性のあるカラーを打ち出しています。

——いわば独立自尊の精神が根付いているといえますね。
佐藤 「自主・民主・連帯」の精神で、「よい会社をめざす」「よい経営者をめざす」「よい経営環境をつくろう」という三つの目的を果たし、「国民や地域と共に歩む中小企業」をめざそうと呼びかけています。会員各社では経営者と社員が一体になって「人を生かす経営」の総合実践に取り組み、「21世紀型中小企業づくり」に向けて邁進しています。

——同友会活動が中小企業経営の原動力に結びついているように感じます。
佐藤 会員数は全国で約4万人を数え、北海道が一番多く約5,600人、続いて愛知県で約3,400人と続きます。東京都は約2,000人となっているのですが、これは大企業の比率が多いからであり、ここからも中小企業経営者の組織であることがおわかりになると思います。大分同友会の会員数は553人(2016年7月11日現在)で、県内6支部(大分・中津・別府・豊後高田・日田・佐伯)に分かれて活動を実践しています。

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第36回定時総会では関啓二・大分県信用金庫協会会長が記念講演を行いました

学びと実践のサイクルを確立

——各支部の活動は活発で、皆さん非常に勉強熱心だと聞いています。
佐藤 会員は中小企業経営者の代表者や経営幹部、後継者がほとんどですが、なかには将来の起業を計画している会員もいます。 一般会員は月一回の支部例会に参加し、経営者の体験報告や講師が話した内容をテーマにグループ討論を行います。さらに当日話したことを持ち帰り、自社の経営課題と照らし合わせながら実践していくようにしています。これら支部活動を柱にした活動とは別に全県行事や全国行事が行われ、お互い学びあいながら交流しています。

——具体的にどのような討論が交わされるのですか。
佐藤 大分同友会では、まずは経営理念、経営方針、経営計画といった企業の進むべき方向を明らかにして経営指針を成文化することを基本に求めます。これらを推進する「経営労働委員会」を軸に、人材確保のための「共同求人活動委員会」、経営者と社員の信頼を深める「社員共育委員会」、共生社会実現を探求する「障がい者問題委員会」と4つの委員会が一体となって、学びと実践のPDCAサイクルを確立しています。

——4つの中に障がい者問題委員会の設置されていることは特徴的に感じます。
佐藤 中小企業家同友会はノーマライゼーション社会の実現に、早くから積極的でした。特に大分県は「日本パラリンピックの父」と呼ばれる中村裕博士(社会福祉法人太陽の家の創立者)の功績が広く知られており、障がい者福祉の先進県です。障がい者雇用の受け入れ賛同企業も多く、障がい者問題全国大会を開催したこともあります。単に障がい者に働いてもらうだけでなく、彼ら自身が働くことに生きがいを持つことが企業の発展につながることを理解している経営者も多い。実際、知的障がいの社員を職場に受け入れてから、他の社員が彼に仕事を教えていくうちに全社的にいきいきとして経営効率がよくなったという例もあるほどです。

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障がい者の就労支援に関する意見交換会

信用金庫と連携して地域経済の活性化に貢献したい

——佐藤代表ご自身は何年に入会されたのですか?
佐藤 2005年ですね、友人に誘われたのがきっかけで、最初はあまり乗り気ではありませんでした(笑)。経営者の会はいくつもありますが、参加していくうちに自分にあっている会だなと思いはじめ、だんだんと積極的になっていきました。支部例会は、自分が所属する支部だけでなく他の支部への参加も自由なので、入会してまもない頃は各支部の様子が知りたくて日田、佐伯、別府の支部例会にも顔を出した思い出がありますね(笑)。

——そこから代表理事に就任されるまでになったのですね。
佐藤 代表理事は前任の岩尾達也代表(三信機器サービス株式会社代表取締役・みらいしんきん同友会滝尾支部会員)から2012年に引き継ぎ、今年で就任4年目になります。代表になり、全国の同友会と交流する機会が増えたのですが、かなり勉強になっています。国との接点も多く、過去には金融アセスメント法の提言や中小企業金融円滑化法施行などで金融庁と大きな関わりを持ったり、中小企業庁が掲げる中小企業憲章も私たちの考えが大きく取り上げられています。

——今後、大分同友会としてはどのような活動を展開していきますか。
佐藤 大分同友会は先ほど話した4委員会のほかに地球環境委員会、広報委員会、政策・地域振興基本条例研究会、青年部と、委員会活動が充実しています。ただ女性部がまだないため、今後は女性経営者への積極参加を呼びかけていきたい。また、「産・学・官・金」連携もさらに推進していく計画です。県内大学とはインターンシップや講師の交流を通じて密接なつながりを持っており、各市町村との振興条例の話も順次進んでいます。そしてこの度は大分県信用金庫協会と業務提携を交わすことにより、連携して地域再生を進めていく段階に至りました。これを機に、会員各社とも「人を生かす経営」を実践し、地域経済に貢献していけるよう切磋琢磨していきたいと心あらたにしています。

※メイン写真は、大分県信用金庫協会の関啓二協会長(大分みらい信用金庫理事長)と握手する佐藤貞一氏

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2016年5月15日(日)には大分市ガレリア竹町ドーム広場で「産学官まちなか交流フェス」を開催

 

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■PROFILE
さとう・ていいち/法友建設株式会社専務取締役。1955年、大分市生まれ。大分鶴崎高校、福岡大学卒業。2003年に同社へ入社。大分県中小企業家同友会には2005年より会員。同年より大分支部経営労働委員会副委員長就任。並行して自社の経営方針、経営計画の立案に取り組み、2006年に経営理念を社内発表。以降、業績の向上に貢献。2012年より大分県中小企業家同友会代表理事へ就任。みらいしんきん同友会鶴崎森町支店会員。
■大分県中小企業家同友会
http://oita.doyu.jp
大分県大分市三ケ田町3-4 ステラ・コルテ2F
※地図
TEL.097-545-0755 FAX.097-545-0744

 

■法友建設株式会社

http://www.hoyu-kk.com
大分県大分市徳島1丁目3158番地の2
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TEL.097-523-5927 FAX.097-523-5934