1954年の創業以来、別府市・亀川で地域密着型の文房具店「堀文具店」の営業を続け、事務用品や教材の納品、通販など、さまざまな事業を展開している株式会社堀文。2019年に同社代表取締役社長に就任した堀雄太朗社長が注力しているのが、地元・亀川の活性化に寄与する「空き店舗ビル活用プロジェクト」です。プロジェクト概要や展開に至る背景、生まれ育った亀川に対する想いなどを伺ってきました。

■「ウォームアップ」の場所として空き店舗を活用
──株式会社堀文の創業は1954年。雄太朗社長で3代目だそうですね。
堀 社名に“文”という文字が入っていることからも分かるように、当初は文房具店からのスタートでした。でも時代が流れ、私が生まれた頃には“なんでも屋”のような地域の雑貨店といった感じになってましたね。お客様が「置いてほしい」と要望のあった商品を置き、文房具以外にも雑誌や日用雑貨、玩具などであふれていました。ある意味、地域のコミュニティとしての役割も果たしていたように思います。私は私で、小さい頃からお店を遊び場にしており、地下の倉庫で友達とかくれんぼなどをしていました(笑)。

──現在の堀文は、どのようなビジネスを展開しているのでしょうか?
堀 実店舗の運営に加えて、企業や教育関連施設との取引が軸となり、事務用品や教材の納品はもちろん、現場のデザイン・レイアウトの提案なども行っています。90年代からは事務用品通販サービス「アスクル」の正規取扱販売店(アスクルエージェント)としても活動しており、インターネットの利点を活かして、より広いエリアをカバーできるようになりました。昨年には当社独自のECサイト「通販と堀文」をオープンし、倉庫の中で眠ることも多かった中古の学校用品を販売するなど、商品を循環させる取り組みも始めています。当社ではこの取り組みを「さぁくる活動」と呼んでいます。

──昨年は本社隣の空き店舗を利用した「空き店舗ビル活用プロジェクト」をスタートさせましたね。
堀 この場所は、JR亀川駅の近く、旧国道10号線や鉄輪亀川線などが交わる交通量の多い五叉路に立地しており、亀川の中でも最も目立つ場所ともいえます。そこが空洞になっていると街の空気が停滞してしまうため、これを解消しようと始めたのが「空き店舗ビル活用プロジェクト」です。ここでは意欲のある方々に活用していただくことで、地元の皆さんの関心が集まるようになり、これが契機となって亀川の中心部をより活気のある場所に変えていければと考えています。本格的に新ビジネスをスタートさせる場所というよりは、むしろ走り出す前の準備段階の場所として活用していただきたいのでプロジェクト名は「ウォームアップチャレンジ」と名付けました。参加される方々には期間限定でこの場所を提供し、夢やアイデアの実現につなげていただければと考えています。

■活気のある亀川を取り戻したい
──プロジェクト開始に至った経緯をお聞かせください。
堀 もともとこのビルでは、時計やメガネを扱う小畑時計店さんが長年営業されていました。しかし後継者がいなかったこともあり、隣接する当社に購入の打診があったんです。そこで会長である父とも相談した結果、当社ビルとあわせて広くなることで何かしらのメリットがありそうだと購入に至りました。でも当初は活用方法などまったく考えていなかったのですが、悩んだ末に当社だけでなく亀川という街全体の活性化につなげたいという結論に達したのです。具体的には、初めて亀川に来た方と地元の皆さんとが顔見知りになる空間にして、そこから亀川に愛着を抱くようになり、再び訪れたくなるように循環していく仕組みを生み出せればと。

──どうしてそう考えるようになったのですか?
堀 現実的に今の亀川は過疎化が進んでいます。よく商店街の先輩たちから「これからの亀川を頼むぞ」と言われるんですが、その言葉の裏には「活気ある亀川を取り戻してくれ」という意味合いも含んでいるのでしょう。昔は亀川駅前に映画館が3つもあり、多くの人が往来していたという話をよく聞かされます。でも今の時代に映画館をつくれば活性化するわけでもありませんから、何か違う形でその思いを成就できないものかと、ずっと思っていたんです。

──亀川に対する愛情の表れですね。
堀 亀川って街そのものが“ダイバーシティ”としての要素が強いと思うのです。町内には別府溝部学園短期大学と付属の幼稚園、高校、専門学校がありますし、亀川駅は立命館アジア太平洋大学(APU)の最寄り駅です。さらに福祉面では太陽の家があり、医療面では別府医療センターもあります。これだけ多彩な人が集まる下地はあるにも関わらず、それを活用しきれていないのではないかと思うのです。まったく違った視点から見れば、別府の中心市街地や、湯治客で賑わう鉄輪地区と比較すると、まだキャンバスが真っ白な状態。つまり何か新しいコトを始めやすい街だと思うのです。

第17回 堀 雄太朗さん/株式会社堀文 代表取締役社長(亀川支部会員) #2 へ続く

交通量の多い亀川の五叉路に立地する掘文本社と旧・小畑時計店hori_02
「街の文房具店」として親しまれている本社1階の店舗フロア
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profile

ほり・ゆうたろう/株式会社堀文 代表取締役社長/1985年、別府市に生まれる。九州産業大学に進学後、2008年に上京し、オフィスデザインのコンサルティングを行うベンチャー企業に入社。営業として大手企業のオフィス移転などを担当。2012年に帰郷し、株式会社堀文に入社。2019年10月に同社代表取締役社長に就任し、現在に至る。
■株式会社堀文
大分県別府市亀川東町27-22
※本社地図
tel:0977-66-0155
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