kyoumachi_1533 kyoumachi_2441
女性起業家の創出を目的としたビジネスプランコンテスト「おおいたスタートアップウーマンアワード」。みらいしんきんは当アワードのサポーター企業として事業の実現・成長促進を応援しており、2018~2019年にかけて開催された2回目のアワードでは、ファイナリストとして登壇した女性起業家9組にサポーター賞を贈りました。
2020年2月には3回目の発表会も控えるなか、2回目のアワードでサポーター賞を受賞した女性起業家から3組をご紹介します。まず1組目は、中津市で手づくり飲茶の店「京町やむちゃ」をオープンした小川千晴さん、藤田好美さん、田中浩美さんにお話を訊きました。

■第二の人生で女性を応援
──「京町やむちゃ」として、商品の販売をスタートしたのは2018年7月だと伺っています。3人で事業を立ち上げたきっかけは何だったんですか?
藤田 実は、私たち3人はパン教室の先生と生徒という関係なんです。小川さんがご自宅で先生をされていて、私と田中さんが生徒ですね。そんな間柄なので仲も良くて、パン教室とは別に、私が以前習っていた蕎麦打ちを一緒にやってみようという「蕎麦の会」で定期的に集まっていたんです。2年ほど前のことになりますが、その日も、教室のキッチンをお借りして蕎麦の会をしていた時だったと思います。小川先生が「昔、豚まんをつくっていたことがあるんだけど食べてみない?」とおっしゃったんですね。

田中 それで、実際につくったものをいただいたら凄くおいしかったんです。藤田さんと一緒に「これを世の中に出しましょうよ!」と意気投合しちゃって。この何気ない一言がきっかけになって、パン教室の一角を「手づくり飲茶工場」にしてスタートさせようと動き始めたんです。

──その時から、第二の人生がスタートしたわけですね。
藤田 3人とも過去に事業をしていたわけではないので、文字通り手探りです。でも私たちは経歴がまったく違うので、それぞれの得意分野を活かすことで、お互いを補えるような関係が築けました。それが功を奏したと思います。

田中 自然と役割分担ができたので、自分の中でやるべきことを見つけて動いていけば、誰かが指示をしなくても進んでいくという感覚はありましたね。

小川 田中さんは販売、藤田さんは企画の経験がありましたから、営業活動が苦手な私は非常に助かりました。それぞれの出身も大分、広島、群馬とバラバラなので、味の好みも大違い。試作づくりについても、私は丁度良い味加減だと思っていたら2人には濃く感じられて口論になることもあるんですが(笑)、それが逆に「3人がおいしいと思うものをつくれば大丈夫」ということが分かって。パン教室の生徒さんにも試食をお願いできるので、そこから改良を重ねて商品づくりを進めていきました。

藤田 小川さんはいろんなものを食べ歩いて研究なさって、現在発売している肉まんにも長年培ったパンづくりの技術が活かされています。食材も、安心・安全にこだわったものを多く使っているんです。京町やむちゃのオープン後に初めて開催したマルシェでも多くのお客様に来場いただいて、その時に初めて「これはいけるぞ」と思いましたね。

kyoumachi_tanaka kyoumachi_ogawa kyoumachi_fujita
■ビジネスとして成立させるには
──「おおいたスタートアップウーマンアワード」にエントリーした経緯について教えていただけますか?
田中 手応えを感じたとはいえ、いかんせん経営に関しては3人とも素人です。なので、中津市内で女性起業家が集まるセミナーに参加しました。その時にアワード開催のお知らせを見つけて、エントリーしてみようということになりました。

藤田 大分県規模のイベントなので、出場できれば宣伝にもなりますよね。それに、あわよくば賞金をいただけたらと(笑)。最初はそんな軽い気持ちだったんですが、エントリーシートを提出する段階になったところで、京町やむちゃのビジネスについて改めて見つめ直す必要が出てきたんです。

──見つめ直すとは?
小川 一言で言えば、3人が共通して持っておくべき「軸」をはっきりさせる作業です。私たちは飲茶づくりを通じて何を実現したいのか、なぜ飲茶づくりをするのか、そんな根本的な部分がはっきりしていなかったんですよね。そこで、3人で考え出した結論は、2つの意味で「女性」に訴求できるビジネスにしようというものでした。

──2つの意味で女性に訴求できるビジネス。詳しく教えていただけますか?
藤田 1つは、子育て世代のママたちに対する訴求です。昔と違って共働きの家庭が増えた中で、子どもや旦那さんに安心して食べてもらえるメニューを毎日考えるのって凄く大変です。そんな女性たちの力に少しでもなりたいと考えた時、飲茶はベストな選択だと思いました。おやつには肉まん、夕飯には餃子。それが、こだわりの食材でつくられていたらママたちもうれしいだろうと。

田中 もう1つの意味での女性とは、リタイア後のセカンドキャリアを考えているシニアの方に対する訴求です。飲茶って、餡をつくる作業、皮で包む作業といった分業がしやすいので、少しでも時間があれば手伝いやすいというメリットがあるんです。「人生100年時代」が進んでいく中で、100歳まで働くのにフルタイムは難しいけど、今までの経験を活かしたいという女性は増えていくと思います。将来的に私たち3人だけでは回せなくなった時に、そういった方々に気軽に手伝っていただける職場になればと考えたんです。

小川 アワードにエントリーしたことがビジネスを見つめ直すきっかけになって、さらには「軸」を明確にできたので、それだけでもやってよかったと思います。

■「希望」を実現するためのアクション
──審査員の皆さんからはどのような評価をいただいたんですか?
田中 ファイナルプレゼンテーションの後に、「女性に対する希望を感じた」とおっしゃっていただきました。これはうれしかったですね。

藤田 でも、私たちの場合は一次審査の書類選考を通過した後が大変でした。プレゼンに向けたパワーポイントづくりや発声練習などがあるんですが、最初につくったパワーポイントが散々な出来で……。講師の方には「こんなの小学生でもできる」って言われちゃったんですよね(苦笑)。だからもう特訓をしながら、プレゼンでは私たちにしかできないことをしようと思いました。3人であることのメリットを活かした「寸劇」です(笑)。

田中 おかげで非常にインパクトのあるものになりました。私たちのプレゼンを見た方を経由して、テレビや雑誌の取材もたくさん来ていただいて。2019年は各地のイベントに30回以上も呼んでいただきました。イベントにたくさん出店すると、リピーターのお客様が増えてくるのがうれしいですね。先日は、福岡の行橋で行ったイベントに、大分市からのお客様が来てくださいました。

小川 パン教室だけをしていた頃は特に宣伝もしていなくて、本当に口コミだけでこぢんまりと営業していたんです。でも、京町やむちゃをスタートさせたら、取材が来る、イベントでたくさんのお客様がいらっしゃる……。冗談ではなく人生が変わりました。仲間と協力することで、こんなにも人生が変わるなんて、本当に思いもよらないものでしたね。

──京町やむちゃの今後についても教えてください。
藤田 実は、イベントで隣同士のブースになったご縁から、「コアやまくに」に商品を置かせていただけることになりました。管理する人がいなくてイノシシの餌になっていた栗を使った栗まんじゅうなど、新しい商品づくりにも挑戦しています。今までは小川さんのご自宅をお借りして販売していましたが、いよいよ本格的に拡販していくことになります。

田中 今後も道の駅などに置かせていただくことを考えたら、より計画的な生産方法を考えないといけません。私たち3人だけの手づくりでは限界も見えてくると思うので、シニアの方が分業で働ける職場として整えていくことも急務です。

小川 そうやって新たな仲間を増やしていけたらうれしいですね。そして、ゆくゆくは京町やむちゃの商品を中津のソウルフードにまで育てられればと思っています。
kyoumachi_1542 kyoumachi_2427
※主なメニューは「ごぼ肉まん」260円、「カフェオレまん」230円、「大納言あんまん」230円、「ひめ餃子」10個入り630円など。

profile

■京町やむちゃ
おがわ・ちはる/京町やむちゃ代表 商品開発担当/神奈川県出身。3歳時に大分県中津市へ転居。短期大学卒業後、栄養士として大分県内の学校に勤務。その後、和菓子や洋菓子、洋食などいろいろな所で学び、中津市内でパン教室を主宰。講師として30年以上にわたって活動を続け、2018年7月に「京町やむちゃ」を創業。

ふじた・よしみ/京町やむちゃ 企画経営担当/群馬県出身。専門学校卒業後はコンピューター会社やアパレル会社、不動産会社などに勤務し、アパレル会社時代に企画業務を経験。その後大分県中津市に転居し、小川さんに師事。夫のマレーシア赴任に同行する形で2年間日本を離れ、帰国後に「京町やむちゃ」を共同で創業。

たなか・ひろみ/京町やむちゃ 営業広報担当/広島県出身。短期大学卒業後は証券会社の営業や小型船舶免許のインストラクターなどを経験。大分県中津市に転居後は、11年にわたってダイハツ九州株式会社内にある売店の販売担当として勤務。その後小川さんに従事し、「京町やむちゃ」を共同で創業。

※写真は左から順に田中さん、小川さん、藤田さん
【京町やむちゃ】
■場所 〒871-0054 大分県中津市京町1462-6
※地図
※南部小学校の体育館側。手作りのぼりが目印。
tel:0979-64-8841
■休日 不定休/お越しの前にお問い合わせください
■ホームページ
https://kyoumachiyamucha.com
■京町やむちゃFacebook
京町やむちゃFacebook
※店舗は冷凍のお持ち帰り専門店です。イベント出店時は温かいものを提供