ラーメン店を中心に飲食店経営や食品製造を手掛ける株式会社ヤマナミ麺芸社。2021年8月には、地獄蒸しでつくる「鉄輪豚まん」を販売する「鉄輪豚まん本舗」の事業を承継し、あらたな事業展開が期待されています。「地域に愛される味を守り広めていくことで地元に恩返しがしたい」と話す吉岩拓弥代表取締役。同社の未来戦略を聞いてきました。

■26歳で決意した「最初で最後の親孝行」
──ヤマナミ麺芸社さんは、もともとお父様が設立されたラーメンチェーン店を引き継がれたそうですね。
吉岩 そうですね。父は1994年の10月に別府で「ラーメン工房 ふくや」を開店させ、その翌月に当社の前身であるゴールドプランニング株式会社を設立しました。その後も「麺堂香」ブランドを立ち上げるなど順調に店舗を増やしていたんですが、私が25歳になった2003年に急逝してしまって…。3歳下の弟とともに、翌年に事業を再開しました。

──お父様のご生前から事業を継承する考えはあったのでしょうか?
吉岩 まったく考えていませんでした。当時の私は古着の販売に興味があり、学生時代から海外にまで買い付けに行き、輸入販売をしていたんです。でも個人の遊び感覚でやる分にはよかったのですが、ビジネスとして事業を拡大するのは大変で…。父もそんな私を見かねたのか、「大分に帰ってこい」と言ってきましてね(苦笑)。だから自分から率先して実家に戻ってきたわけではなく、両親の下では家業を手伝うレベルで働いていたに過ぎなかったんです。

──実際に代表者として引き継がれてみて、どうでしたか?
吉岩 父はいろいろな事業を展開しており、いわゆる負債も抱えていました。それでも天国から「お前に任せてよかった」と言ってもらえるような会社にしていくことが最初で最後の親孝行だと思い、弟と一緒に走り始めることを決意したんです。もちろん、この20年は言葉では言い表せられない苦労もたくさん経験しました。しかし、応援してくれる多くの皆さんとのご縁もあって、今に至ることができています。

■いろんなタイプのラーメンを楽しんでもらう
──社長就任4年後の2008年には、新ブランド「太一商店」を立ち上げられましたね。
吉岩 私は、ひとつの味に絞った豚骨ラーメン店を増やすだけの事業展開ではなく、地域でいろんな味のラーメン屋があった方が楽しいと考えています。食の選択肢があるということは、豊かさのバロメーターにもなりますしね。そういった考えから、豚骨ラーメン定番の細麺とは真逆の太麺を取り入れた、いわゆる“二郎系”と呼ばれる「太一商店」を立ち上げました。九州ではなかなか太麺を見る機会がないので、お客様からは「これ、うどんじゃないか」というお叱りをいただいたこともあります。それも含めて貴重な勉強になっていると受け止めています。

──御社が展開してきた多彩に富んだラーメン店は、いずれの店も人気を呼んでいると耳にします。
吉岩 2009年に濃厚醤油ラーメン「馬力屋」、2013年には味噌ラーメン「味噌乃家」を出店しました。馬力屋については、東京で“家系ラーメン”を展開している方から濃厚醤油ラーメンのつくり方を教えていただいた縁があり、「このタイプのラーメンは九州にないから、面白い展開になるかもしれない」という考えから出店に至りました。「味噌乃家」については、「北海道の味噌ラーメンをベースに九州風にアレンジしたい」という想いがあって、実際に北海道の店舗で修行をさせていただきました。

──いろいろと研究をされているのですね。
吉岩 時間があれば全国を食べ歩き、それぞれの土地でつくり方を教えていただいています。これはもう趣味のようなもので(笑)大学時代はバイクに乗って福岡中のラーメンを食べていましたね。地域が変わればラーメンに対する考え方も変わるので、そこが非常に面白いんです。例えば九州の豚骨ラーメンはスープにこだわりますが、北海道の人たちは「味噌ダレがキチンとしていればいい」という考えなんです。そういった文化の違いに触れることで自分の知見を広げ、当社の経営に還元しています。とはいえ、「よし、このままノリで行こう!」みたいなところも多分にあって、おかげで失敗もたくさん経験しました(苦笑)。

「第20回 吉岩 拓弥さん/株式会社ヤマナミ麺芸社 代表取締役 #2」へ続く

profile

よしいわ・たくや/株式会社ヤマナミ麺芸社 代表取締役/1978年、別府市生まれ。九州産業大学国際経営学部に入学。大学在学中から輸入業などを手掛ける。2003年に帰郷し、ヤマナミ麺芸社の前身となるゴールドプランニング株式会社に入社。2004年、父親の急逝に伴い代表取締役に就任。2018年、社名を株式会社ヤマナミ麺芸社に変更。飲食店経営や食品製造を軸に多角的な事業展開に取り組む。ラーメン店経営の基礎を学ぶ「プロの為のラーメン学校」講師も務める。
■株式会社ヤマナミ麺芸社
本社 大分県大分市日吉町4番3号
※本社地図
tel:097-558-0113
https://yamanami39.com/

■店舗展開情報
https://yamanami39.com/brand