■似て非なる、一卵性あるいは二卵性双生児な街
~ 北千住と南千住 〜
 東京には頭に「東西南北」「上下」「新」がつく、紛らわしい地名や駅名がたくさんあります。
例えば「大久保/新大久保」「下北沢/上北沢/東北沢」「銀座/東銀座」「新宿/西新宿/東新宿」「荻窪/西荻窪」「小岩/新小岩」「中野/東中野/中野新町」「池袋/東池袋」等々…。全国的に有名なところもあれば、東京都民もあまり知らない(区別がつかない)ところもたくさんあります。なぜか「渋谷」にはありませんが…。
お互い似たような街もあれば、まったく雰囲気(環境や住人)が違う街もあり、でもそれぞれ個性に溢れ、大変魅力的です。

今回注目したのが北千住と南千住。住人以外は、どっちが足立区で、どっちが荒川区なのか、千住はどっちのことなのか等々、ほとんど知らないと思います。
基本的に駅前にルミネ丸井があって、駅周辺に一大飲み屋街が広がるのが北千住(足立区)。
再開発が進み、高層マンションが立ち並び、ショッピングモールや大きな公園が造られ、「本当に住みやすい街・6位(2017年)」にも選ばれたのが「南千住(荒川区)」。
ざっくりと「動の北」「静の南」という感じですが、両者とも一度足を踏み入れると底なし沼的魅力に溢れています。

最近の北千住はSENJYO(センジョ≒北千住をこよなく愛する若い女性)なる人種が現れ、一部メディアを賑わせています。
北千住のおしゃれカフェとSENJYO
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彼女たちの主な目的はルミネでも丸井でもなく、北千住駅前西口に広がる飲み屋街。かつてのサラリーマンの聖地は、今やSENJYOの聖地と化しています(ちょっと盛ってますが  笑)。
これら飲み屋街の特徴は「新宿ゴールデン街/思い出横丁」タイプのレガシーな飲み屋街と、「中目黒/三軒茶屋/恵比寿」タイプのオシャレ居酒屋やバーがハイブリットに融合している点。さらにSENJYOを虜にしているのが「清澄白河」(#10参照)や、鎌倉/小町通り(横路)を思わせる喫茶店と、とにかく「映える」メニュー満載のカフェが、これまたハイブリッドに融合しているスポット。週末になると歓楽街の裏道に行列を作るSENJYO達を拝む事が出来ます。
ディープでお洒落なハイブリッド飲み屋街
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ちなみにSENJYOの正体は地元というより近隣からの越境組(特に埼玉県)が多いらしく、加えて女子学生(東京藝術大学千住キャンパス等もある)やOLが週末や仕事帰りに出没するとのこと。
とはいえ立飲み屋、ラーメン屋、ガールズバー(←やたら目立つ)も多く、コロナが収束傾向の今となってはサラリーマン同士が夕方17時前後から飲む姿も多く見受けられますので、どうぞご安心下さい(笑)。

一方の「静の南千住」はユニクロライトオンのほか、西松屋等が入る三井不動産系駅前ショッピングモールに象徴される典型的なファミリーマーケット…なんですが、小塚原刑場や吉原等の風俗施設が江戸の北限(末端)である南千住に移転してきたという歴史的な背景もあります。
今でも東京下町情緒を色濃く残す商店街や、隣接する三ノ輪駅の名物・都電荒川線等の風景は、まさに東京の原風景と言えるでしょう。
静の南千住
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「北千住」も「南千住」も交通の便に大変恵まれているため、「本当に住みやすい街」に選ばれるのも当然ですが、何よりも東京の現在・過去、(もしかして)未来を実感・体感するには、再開発で無味無臭の街と化した渋谷より、はるかにエキサイティングです!
ぜひウィズ・コロナの東京観光コースに組み込んで下さい!

 

 

profile

柴田廣次
しばた・ひろつぐ/1960年、福島県郡山市生まれ。筑波大学卒業後、1983年株式会社パルコ入社。2004年〜2007年には大分パルコ店長を経験。2018年2月に独立し「Long Distance Love 合同会社」を設立。
■Long Distance Love合同会社
https://longdistancelove.jp
■「TOKYO LAB 2019」@渋谷クラブクアトロ
Long Distance Loveプロデュースイベント
https://youtu.be/_w89k-PK_O0
■コラムインコラム
過去と未来がシームレスに交錯
ハイブリットタウン・北千住を見事に体現しているカフェがSd Coffeeと言っても過言ではありません。東京では「純喫茶店ブーム」「町中華ブーム」が相変わらず続いており、あの西武園ゆうえんち等の大規模施設も昭和テーマで全面リニューアルに踏み切る等、いまだに「昭和レトロ」がビジネスになっています。そんなブームを意識しているというより、オーナーの趣味嗜好を前面に押し出した結果、「昭和」にリンクしてしまったのが「Sd Coffee」ですが、その名前の由来は…オーナーの実家が「鈴木電気(Sd)店」という、結構安直な理由。しかも店内全体の装飾コンセプトはこれまたオーナーの趣味の「銭湯」(Sd=銭湯大好きの意味も)。店内にはお馴染みケロリンの黄色いプラスチック製の桶が積み上げられ、昭和ノスタルジーには欠かせない(ちょっと錆びた)ブリキの看板が随所に。トイレ周りには「ジャイアント馬場のプロレス試合のポスター」が貼られ…。これだけならありがちな「昭和カフェ」の佇まいですが、ここは違います! 例えばメニュー。銭湯の牛乳瓶を使って提供される斬新なスイーツ、鎌倉の有名店のソーセージを使ったホットドッグ、なぜかつけ麺風に食べるナポリタン等時空を超えたオリジナリティを感じるメニューが盛りだくさん。さらには「Sd Coffee」オリジナルデザインのTシャツ(デザイン多数)、キャップ、雑貨(マグカップ・スマホスタンドからスケートボードまで)とにかくやりたい放題。ありそうで、全くない「未来指向の昭和カフェ(?)」にぜひ足をお運び下さい!(追伸 あまりに個性的かつメニューのボリュームが半端無いので「SENJYO」の姿はあまり見掛けられず、北千住ファミリーや男同士が目立ちます)