■進化する東京のブルックリン、蔵前。
キーワードはインディペンデント・アートギャラリー
わが街・浅草のお隣で、比較的地味な存在だった蔵前がいきなり「東京のブルックリン」なる不相応な呼び名を拝命し、脚光を浴びたのは約10年前。
その火付け役は紛れもなく「Nui.HOSTEL&BAR LOUNGE」です。

インバウンドが急増し、いよいよ観光立国ニッポンの中心・TOKYOがかつてないほどの注目を浴びたのと時を同じくして、東京でもリノベーション系簡易宿泊施設が登場してきました。
そのパイオニア的存在が「Nui.」。ブルックリンというよりはポートランドの意匠(雰囲気)を纏った宿泊施設は、IT&飲食系フリーランスの若者やインバウンド、特にバックパッカー的観光客にたちまち注目され、その後の雨後の筍的なリノベ宿泊施設が乱立する状況を生み出していきました。もちろんコロナの影響をもろに被ったことは確かでしたが、元祖「Nui.」が生き残って、さらに進化している背景には、BAR LOUNGEで頻繁に開催されていた独自のアートや音楽イベントによって、スタートから「Nui.」ブランドの確立を目指したことでしょう。

そして10年が経ち、「アフターコロナ・ウィズコロナ」のニュー・ノーマルライフが問われる時代に入り、東京のブルックリン、蔵前で大きな存在感を示しているのが、現代作家を中心にしたインディペンデント・アートギャラリーです。

その象徴的な存在としてがぜん注目を集めているのがKAIKA東京
インディペンデントと呼ぶにはスケールが大きいですが、「アートストレージとホテルが融合したコンテンポラリーアートの拠点」として、館内に複数のアートギャラリーの展示と所蔵の場所を有する、極めてユニークな施設と言えます。場所は蔵前と浅草の中間(墨田区側)という微妙な位置にありながら、その存在感と評判はますます大きくなっています。
最近あらたに蔵前にオープンした2つのインディペンデント・アートギャラリーも大注目です。
ひとつ目のiwao galleryは、蔵前駅から徒歩1分。大通りから道1本奥に入った場所にひっそりと、でもただならぬオーラを感じさせるコンクリートのビルの2階にあります。
外に面した一面ガラスの壁面からは展示中の(メインの)作品を見ることができて、展覧会への期待の高まりを演出する見事な設計です。決して大きくはないスペースですが、国内外の大物の写真家や海外のユニークな作家がキュレーションされていて、実に見応えがある、通いたくなるギャラリーです。

ちなみに1階は若いご夫婦が切り盛りする瀟洒なビストロ。素晴らしいアートと美味しい食事がいっぺんに堪能できる、実は今の東京にありそうでない贅沢な時間を過ごせる場所と言えます。
ふたつ目のギャラリーは、6月にオープンしたばかりの隙間(すきま)

デザイナー柏崎亮が手掛ける革靴・小物を中心とするブランドエンダ―スキーマが「物々交換」をコンセプトにしたオルタナティブ・スペース…。ちょっと分かりにくいですが、要するに「スペース(隙間)とアーティストが持つ思考を貨幣を介さずに交換できる場」として運営すること。さらに分かりにくくなるので、説明はこのへんにしておきます(笑)。
いずれのギャラリーも六本木や上野の美術館のような派手さやメジャー感はありませんが、確実にアート作品や作家とじっくり向き合い、自分にとっての意味を考えることができる空間と時間を提供してくれます。
これらのギャラリー(冒頭の「Nui.」も)が、もともと玩具製造会社の倉庫だったというのも、蔵前らしいエピソードです。

「東京のブルックリン」と言えるかどうかはさておき、自分なりの「ウィズ・コロナ」のライフスタイルを見つけるためにおすすめしたい「ぶらり蔵前アートの旅」です。

profile

柴田廣次
しばた・ひろつぐ/1960年、福島県郡山市生まれ。筑波大学卒業後、1983年株式会社パルコ入社。2004年〜2007年には大分パルコ店長を経験。2018年2月に独立し「Long Distance Love 合同会社」を設立。
■Long Distance Love合同会社
https://longdistancelove.jp
■「TOKYO LAB 2019」@渋谷クラブクアトロ
Long Distance Loveプロデュースイベント
https://youtu.be/_w89k-PK_O0
■コラムインコラム「ホントは教えたくない1冊
今までこのコラムでは「教えたくないけど、教えます」的な、ちょっと上目線な紹介をしてきた手前、今回は気が引けるのですが。「ビオレッティ・アレッサンドロ作品集~ARE YOU A REBEL?」は、いわゆる通常の出版物ではなく、アーティストの展覧会に合わせて制作されたカタログです。
実はこの展覧会を私、柴田(LDL)が企画プロデュースしておりまして、現在絶賛開催中です(7/13まで)。会場の東京・表参道にあるBOOKMARCは、NYに本拠地を構え、世界的なファッションブランド「MARC JACOBS」が手掛けている超高感度ギャラリー。場所柄東京でも随一のお洒落なお客様の溜まり場でもありますので、東京出張の際はぜひお立ち寄り下さい(ビルオーナーはあの藤原ヒロシ氏)。そんなHOT&COOLなスペースで作品を発表しているビオレッティ・アッレサンドロ氏とは、18歳の時に初来日、2015年より東京在住。「銭湯」と「相撲」と「矢沢永吉」をこよなく愛するイラストレーター/デザイナーです。私が彼と出会ったのは約4年前の初個展。その独特なフォルムとユーモア(と皮肉)に溢れる作風に一目惚れして、即作品購入。その日からいつか一緒に仕事が出来たらと考えるようになりました。コロナ前から少しずつイラストをお願いしながら、近いうちに個展を開催したいという想いがお互い強くなり、僕(LDL)がプロデュースを買って出て、晴れて(関東最速の梅雨明けタイミング)実現に至った次第です。会場に展示した新作以外にも、漫画やオリジナルステッカーが付いた限定200部の作品集は、(男同士ですが)二人の共同作業で生まれた赤ちゃんのような存在です。というわけで、超手前味噌な紹介になってしまいました。彼の作品や展覧会等の情報は↓まで。
 HP  https://alekun.com
instagram https://www.instagram.com/alessandrobioletti/