■令和時代の新しいフェスのかたち
~大分発マイクロフェス『
Come On Fes』のススメ」

いきなり脱線しますが、先月(2022.10/24-25)東京・丸の内界隈でNEWS PICKSが主催するCHANGE TO HOPE 2022なるビジネスフェスが開催されました。
コロナ禍前、この手の官民連携型意識高い系イベントは盛んに行われていて、興味を持って行く度に期待を裏切られていました。なのに凝りもせず今回のイベントに顔を出してみる気になったのは、そのテーマ設定とゲスト(登壇者)に興味がそそられたから。結果2日間で5セッションに参加してきました。
それぞれのテーマはこんな感じでした(登壇者名は省略)。

(1)プロによる本気の企画会議。もしも東京で超都市型フェスを開くなら?
(2)NFT、クリプトは世界をどう良くするのか? Web3.0 が灯す希望
(3)逆境を乗り越えるリーダーの思考法~ピンチを突破するレジリエンス戦略
(4)日本の現状と、絶望からどう希望を見出すべきか
(5)デジタルネイチャー宇宙時代のサステナビリティー

もちろん5セッションすべてが期待通り刺激に満ちて、有意義な内容ばかりではありませんでしたが(自分には理解が及ばない分野も多く…)、それぞれに気になる「ワード」(コンセプト、HOPE)を見出せたこともあり、収穫も少なくありませんでした。

さて、ここから本題です。
今回のイベントが「ビジネスフェス」という、実はあまり耳慣れないタイトルと、(1)の「超都市型フェス」の定義とは何なのか、が妙に気になり…。要するに大型野外音楽イベントから、飲食チェーン店やコンビニの販促キャンペーンまですべて「〇〇フェス」で収めてしまう便利ワード「フェス」とは一体何なのか⁉」をあらためて考えてみよう思います。

セッションの詳細はさておき、登壇者の一人(茨城県出身の著名な投資家・起業家)が、あのROCK IN JAPANの会場を茨城県から千葉県に移されたことを受けて(恨んで?)、自ら未経験にもかかわらず新たな音楽フェスLucky Fesを立ち上げた武勇伝と、目標は「ROCK IN JAPAN」を超えるどころか世界一の規模のフェスに成長させること、という威勢の良いトークを披露していました。
どうやらビジネスでも音楽・エンタメ系でも、「フェス」というワードには一般的な想定以上の規模感(期待感)を伴うことが必要と言いたかったのかもしれません。

そんな自称(?)超都市型フェス仕掛け人達の野望とは真逆とも言えるのが、10月初旬に大分市内でひっそりと(?)開催されたフェス「Come On Fes 2022 in TAKENISHI」(以下「C.O.F」)です。

ひっそりとはいえ、同じタイミングでJC(日本青年会議所)のメンバーが集まる超全国型フェスや、大分市内でお馴染みの音楽フェス「おおいた夢色音楽祭」が開催されていて、市内中心街合同フェス的な規模感は出ていました。

そこで開催された「C.O.F」は、複数の商店街が交差するガレリア竹町商店街の西端、通称「竹西(TAKENISHI)」という超狭いエリアに限定した「マイクロフェス©」です。
いわゆる屋台が並び、仮設ステージで地元アマチュアバンド(一部プロがゲスト出演)のライヴが開催されるお馴染みの景色ではなく、古い商店街に若い人たちが集まり、様々な業種・業態が動き出している極小エリアやビルにスポットをあて、ある種の社会実証実験的要素を含んだイベントが集積した、ごく小規模のフェスです。
今回の対象エリア・竹西で店舗や事務所を構える人達、地元大学生達、東京から招待したアーティストのイベント(ハービー・山口氏のフォトシューティングや、大分初のエンターテインメント(サイレントシアターをハイブリッドで組み合わせたマイクロフェスの仕組み(プラットフォーム)は、これまでの行政・商店街主体のお祭りとは明らかに違う賑わいやムーブメントを起こす可能性を秘めています。

例えば今回のフェスで大きな評判を呼んだのが、竹西エリアの飲食店(8店)がオリジナルの「コロッケ」を開発して販売した竹西コロッケ物語。それぞれのお店が工夫を凝らして個性的なコロッケを店頭で販売し、購入者が街中でコロッケ片手にビール等を飲む…。東京・下町の商店街ではごくありふれた日常ですが、実は大分ではお目に掛かれない景色。
さらにそれをハービー・山口氏が撮影し、その写真をすぐさまプリントし、若者が集まる竹西エリアの人気カフェ壁面に次々と展示していくライヴ感等々、「日常感×非日常感」が大きな特長です。
「盆踊り」「ホコ天」的フェスの予定調和感(安心感)も大切ですが、「これからのまちづくり」「市内中心部活性化」等といった古臭い抽象的な開催趣旨に流されず、常に「実験」を繰り返す予測不能なマイクロフェスが、新たなビジネスプラットフォームになることは十分予測可能です!
知らんけど。

profile

柴田廣次
しばた・ひろつぐ/1960年、福島県郡山市生まれ。筑波大学卒業後、1983年株式会社パルコ入社。2004年〜2007年には大分パルコ店長を経験。2018年2月に独立し「Long Distance Love 合同会社」を設立。
■Long Distance Love合同会社
https://longdistancelove.jp
■コラムインコラ
「読んでるふりをしただけで尊敬されるかもしれない本」の紹介第
2弾!


というわけで前回に続いて「現代最高の知の巨人(らしい)エマニュエル・トッド氏、再登場です。
今回紹介する本のタイトルはシャルリとは誰か?…これだけでピンときました。自分の周りで読んでいる人はほとんどいない≒読んだふりだけで一目置かれる、という予感です。しかし読み始めると、読んだふりどころか、どんどん引き込まれていきました。そして西欧(ここでは主にフランス)やイスラム教という、普段からそこそこ耳馴染みのある言葉(概念)についていかに無知であるかを思い知らされました。
書名にある「シャルリ」とは、フランスの諷刺新聞『シャルリ・エブド』のこと。もちろんその存在すら知らなったし、2015年1月に新聞掲載されたムハンマドを風刺した画が引き金になって関係者への殺戮(テロ)に発展し、フランス全土に広がるデモを引き起こしたことなんて、なおさら知りませんでした。だからと言って、この本をきっかけに当時のフランス人のように(?)「外国人(≒移民)恐怖症」に短絡的に陥ったりしたわけではありません。
歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏の世界情勢の長期的、俯瞰的な見方・考え方には、毎度とにかく圧倒されます。「ウクライナ危機」や「イギリスのEU離脱」等を早い段階で予見していたと言われ、その眼差しは「日本の少子化対策の甘さ(が引き起こす様々な危機)」にもしっかり向けられています。
いつになくシリアスな紹介文になってしまいましたが、いったん読み始めたら、サスペンス小説さながらのスリリングかつ論理的なストーリー展開に気が付けばページをめくるスピードがアップしていることに気づくはずです。
とにかく百聞は一読に如かず。一度「読んだフリ」をしてみて下さい。

【追記】日本では2016年1月に発売されましたが、翌年2017年にはすでに5刷目、なかなかのヒット本です。ちなみに私が買った5刷目には異なる帯が2枚重ねて売られていました。発売時は「イスラム恐怖症が『自由』『平等』『友愛』を破壊する、というちょっとぼんやりしたコピーが本人の写真入りで、増刷分には黄色とネイビーのウクライナカラーで「世界を読む驚異の地政学~ウクライナ危機も予言していていた!」と刺さるコピーのみ。売れる本づくりの秘訣がここに!