Long Distance Love 〜東京より熱烈な愛を込めて #27-01」からの続き

続・進化し続ける『蔵前』と広がりをみせるインディペンデント・ギャラリー 02

このようなインディペンデント・ギャラリーは地方への広がりを見せており、なかでも注目されているのがトトノエルギャラリー」(福島県郡山市です。
建築家による実験的な郊外住宅の一機能として作られたカフェギャラリーで、いわゆるカフェに壁面ギャラリーがインテリア的に併設されたレベルではなく、写真家の森山大道氏、石川直樹氏、(そして、ここでもw)ハービー・山口氏といった巨匠たちの企画を続けている、極めてハイレベルな空間です。
大分県大分市にも気になるカフェギャラリーがあります。
ガレリア竹町商店街にある「10COFFEE BREWERS」です。
古い商店街の端にある小規模の複合施設が集積したビルの2階にあるカフェギャラリー(本コラム冒頭のメイン写真)ですが、一見、若者を中心に賑わっている新興のカフェですが、コンクリート打ちっぱなしのミニマルな空間で開催される展覧会は、まさにアートギャラリーそのものです。
オーナーがキュレーションする、有名無名問わず個性的で魅力的なアーティストの作品に触れることが出来るスペースは、アート愛好家のコミュニティサロンとして街(商店街)の魅力づくりに大きく貢献していると思います。
ちなみにこの写真は、2022年10月にガレリア竹町商店街で実施された「ハービー・山口 大分フォトシューティング」の一場面。10COFFEE BREWERSで撮影中のハービー氏です。
コロナ禍前に「経営にはアートが必要」といった思想を、安易に解釈したまま取り入れていた大企業の経営者が多く見受けられました。NFTアートのブームに乗って、自称アーティストや、にわかアートビジネスマンも急増しています。
しかし、あらためて感じるのはアートやアーティストに対する真摯で熱い思いを持った小さなギャラリーオーナーの存在と、その空間に足を運び、作品に直に触れ、何かを感じてくれる人たちの存在が、「良い街づくり」に不可欠であるということです。

■infomation
「ハービー・山口写真展 We will be alright! なんとかなるさ。」
【会期】2023年6月10日(土) 〜7月2日(日)
【場所】10COFFEE BREWERS 大分市中央町3-6-13ロキシービル 2F
【入場料】無料
【お問い合わせ】株式会社Cont
tel:097-532-8908

profile

柴田廣次
しばた・ひろつぐ/1960年、福島県郡山市生まれ。筑波大学卒業後、1983年株式会社パルコ入社。2004年〜2007年には大分パルコ店長を経験。2018年2月に独立し「Long Distance Love 合同会社」を設立。
■Long Distance Love合同会社
https://longdistancelove.jp
■コラムインコラム
こんな時代だからこそ大切な言葉
前ニュージーランド首相のジャシンダ・アーダーン氏が新型コロナの感染対策として、全土の都市封鎖に踏み切った際に国民に呼びかけた言葉は「Be Strong.But Be Kind.We will be OK.(強くいてください。でも、やさしくいてください。そうすれば、私たちはだいじょうぶ)」
そして5月に渋谷パルコで写真展が開催され、大好評を博した世界的写真家・ハービー・山口氏の最新作品集のタイトルがWe will be alright!なんとかなるさ。
世界中で頻発する異常気象によ自然災害、2020年代になっても繰り返される戦争、終わることのないウイルスによるパンデミック、AIの加速度的な進歩による目に見えない不安の増殖など、予測不能な今の時代を生きるにはともすると軽薄に聞こえる「なんとかなるさ。」という言葉。
でも「国境・時代・世代」を超えて、50年にわたり撮り続ける写真が「対」になって、目の前に現れた瞬間「なんとかなるさ。」という言葉に大きな意味があることを実感します。ハービー氏の視線(カメラ)が捉えた景色は、例えば窓から顔を出して外を眺める2人の女性…。ひとりは1974年フィンランド、もうひとりは2004年東京で偶然撮影された何気ない生活のワンシーン。あまりのの共通性(構図や被写体の表情・目線)にただただ驚くばかり。
ハービー氏が語るのは「人類誕生の歴史(約500万年前・諸説あり)と比べたら、人生100年なんてほんの一瞬。今を生きてる人達なんて『人類みな同い年』(箭内道彦氏「サラリーマン合気道」よりなんだから、争ったり、(自然を)破壊したりしても意味がない。」「相手の幸せを祈って写真を撮る時にいつも思うのが「私たちはだいじょうぶ、なんとかなるさ。」
大分市内でも開催されるハービー・山口写真展の会場に、ぜひ足を運んで「なんとかなるさ。」な気分を感じて下さい。