このコラムで頻繁に取り上げた東京の「大規模再開発」という名の「大量破壊計画!?」の数々…私はこれを勝手に「東京ディストピア宣言」と呼んでいます。

その最たるエリアが渋谷=SHIBUYAなのは言うまでもありません。そんなディストピア化するSHIBUYAを救おう!」と立ち上がった救世主のひとりが「ドン・キホーテ」でした。
一方、超大手不動産開発会社「三菱地所」(丸ビル系)と「三井不動産」(ミッドタウン系)が火花を散らす東京・丸の内エリアは、もはや何の趣も無い「横丁もどき」と「POP-UPという名の仮営業」飲食店街がメインテナントとして軒を連ねる、見かけは豪華なビルが乱立することになりました。
さらに由々しき事態は、あの「世界の富裕層の溜まり場」である銀座が「百均」と「ファストファッション」の聖地と化したこと。最近では、「EVERY DAY LOW PRICE」でおなじみの庶民のスーパーマーケット「OKマート」が出店し、お総菜コーナー名物の390円カツ丼に連日行列が出来ているそうです。

このように東京は完全にアナーキー状態で、今までの観光案内情報系OSを一気に書き換える時期に差し掛かっています。
そんなカオスな東京を「BACK TO THE FUTURE」的視点で救おうと頑張っているのが下北沢であり、前回紹介した池尻大橋いった、比較的小さいエリアの「シン・まちづくり開発」です(もちろん賛否両論はありますが)。

前置きが長くなりましたが、今回のそんな小さな開発の主役は「自由が丘」です。
かつては「ザギン」(銀座)「ギロッポン」(六本木)同様、怪しい業界人から「オカジュー」と呼ばれ、松田聖子のアパレルショップ「フローレスセイコに連日大行列が出来て、駅前には餃子ブームの先駆けとなった「自由が丘餃子センター」や、超個性的な飲食店が入居する「自由が丘デパート」など、渋谷・原宿・新宿等とは一線を画すローカルかつ小ぎれいな佇まいを持ったトレンドスポットでした。

しかし、そんな自由が丘界隈も、ここ数年はフツーな街並みの印象が漂ってきました。
そこに飛び込んできたのが「イオン、自由が丘に初の都心型(小型)店舗出店!」と、ちょっと光が見えるニュースでした。
業界視点に立って大変興味深い取り組みかも、とちょっとだけ期待を持って現場に直行してみると…
商業施設「自由が丘デュアオーネ(de aone)」(恐らく「で逢おうね」の意味)は、確かにイオンの香りはしないものの、地下1F全体を占めるのは、かつて自由が丘のシンボルのひとつだったスーパーマーケット「ピーコック」(現イオングループ)が復活出店。充実したイオンPB商品が陳列されている売り場を拝見して、やっぱりイオンの商業施設であると即認識しました。
上層フロアは「自然と自然に落ち着ける場所」というコンセプトを具体化したガーデン風な休憩スペースやテラス席で、他フロアはあまり見慣れない目新しい飲食店やアパレルがゆったり並ぶ、自由が丘マダムの時間潰しにはうってつけの商業施設に仕上がっています。
……が、「これで良かったのか、イオン!」と、思わず声を張り上げたくもなりました。
周辺の奥沢や等々力エリア等には、かつての自由が丘の顧客をいまなお惹きつける魅力的な路面店(飲食・ライフスタイルショップ)を集積させているのに対し、東横線の顔でもある自由が丘がイオンの新業態に対する私の期待が大きすぎたのかもしれません。
今後は自由が丘駅前に2025年竣工予定の14階建て複合施設(商業施設・オフィス・住居という組み合わせ)に「真の自由が丘」ブランドの復活を託すのか、注目していきたいと思います。
余談ですが、かつてのオシャレタウン・代官山も、人気施設「代官山蔦屋書店」に続き「フォレストゲート代官山」がオープンしました。人気の建築家・隈研吾という強力な助っ人を起用してブランディング再生に取り組みましたが、残念ながらかつて一斉を風靡した「同潤会代官山アパートメント」(1996年解体)を超えるインパクトはありませんでした。

「再生」と「破壊」が紙一重ともいえる大型開発が加速する東京。
そのほとんどが、いわゆる「ステルス攻撃」です。
今後も東京の大規模再開発の進捗状況について眼を光らせ、都民としてしっかりリポートしていきたいと思います。

profile

柴田廣次
しばた・ひろつぐ/1960年、福島県郡山市生まれ。筑波大学卒業後、1983年株式会社パルコ入社。2004年〜2007年には大分パルコ店長を経験。2018年2月に独立し「Long Distance Love 合同会社」を設立。
■Long Distance Love合同会社
https://longdistancelove.jp
■コラムインコラム
鰻屋ならぬ古本屋の匂いに誘われて
 個人的な話で恐縮ですが、コロナ禍前はどちらかと言えば趣味の出費はライヴ&グルメが中心でした。しかし今年になってコロナが落ち着いてきてからは、読書&料理に大きくシフトしました。特に本に関しては月30冊程度(1日1冊)買っている感覚です。さすがに毎日1冊を読破することはほぼ不可能なので、おのずと未読の本が積み上がっていきます。電子書籍にまったく興味が無いので、居住空間が日々、本や雑誌に侵食されています。
そんな充実過ぎる読書生活に弾みをつけてくれたのは、「素敵な古書店」との再会です。Amazonもkindleもスマホも無かった30年くらい前にも、古書店巡りにハマった時期がありました。その時は「坂口安吾全集」「吉田健一全集」「大江健三郎全集」といった過去の名作の大人買い的な興味でした。ちょっとカビ臭い匂いや、実は読みにくい活版印刷の文字に愛着を感じていました。
そしてここ数年は、ふらりと古書店に出向いて、偶然見つけた(目に飛びこんできた)約10~30年くらい前の本を中心に買って、ちゃんと読み切ることが楽しくなってきました。
前置きが大変長くなりましたが、今回ご紹介する「小商いのすすめ」(平川克美著)は9月に訪れた金沢の古書店オヨヨ書林で衝動買いした1冊です。初版発行は2012年2月で、副題は「経済成長から縮小均衡の時代へ」という、2023年に読むにはちょっと古臭い(鮮度が落ちた)ビジネス書のようですが、「小商い」という聞き慣れないタイトルが妙に引っ掛かりました。今なら(サルでもわかる)「マイクロビジネス」「スモールビジネス」的なタイトルが付けられそうですが、いざ読んでみると全く違っていました。この本が東北大震災直後に発刊されたことは、著者が当初考えていた方向から大きく変わったことを意味していて、帯に書かれているコピー「日本よ、今年こそ大人になろう」の通り、流行りのビジネス書ではなく、普遍性を持った倫理社会のような本と言えます。
「経済、経済、経済」とやみくもに連呼するだけの「大人になりきれない」日本の現状は、10年前と1ミリも変わらないことを証明(予言)している1冊です。