まちづくりの歴史を物語る、鉄輪温泉を詠んだ俳句集

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別府八湯のなかで、もっとも多く温泉源が集中し、昔ながらの湯治場の風情を残している鉄輪温泉。その中心を通る、いでゆ坂の石畳を下っていくと、鎌倉時代に鉄輪温泉の礎を築いた一遍上人ゆかりの温泉山永福寺が見えてきます。毎年9月に行われる「湯あみ祭り」でも有名なこのお寺の奥にある宿が、今回ご紹介する温泉閣です。

「当宿の創業は明治年間で、宿房として使われていたこともありました。自慢の温泉は『温泉教授・松田忠徳の日本百名湯』(日本経済新聞出版社)でも紹介されており、肌にやさしい美肌の湯として親しまれています」(河野忠之 代表)

最近は長男の河野史郎さんが開発した、こだわりのスイーツ「金のプリン」も女性客に人気で、これもまた新たな名物に加わりそうです。

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ところで鉄輪温泉を散策していると、至る所で句碑を見かけます。これは、河野代表が会長を務めるまちづくりグループ「鉄輪愛酎会」が、鉄輪温泉をテーマに毎年募集してきた「鉄輪俳句筒湯けむり散歩」の優秀作品を刻んだもの。募集は1992年にはじまり、町並みに設置された筒に投句するようになっており、毎年約2,000句もの作品が全国各地から寄せられ、なかにはブラジルなど海外からの応募作品もあります。

「鉄輪愛酎会は、鉄輪のまちづくりに熱心なメンバーを中心に発足しました。『鉄輪俳句筒湯けむり散歩』は、オリジナルブランド『鉄輪焼酎』の販売で生じた利益をまちづくりに還元し、鉄輪の浮揚を図ることを目的にスタートした事業です。これをきっかけに、たくさんの出会いがあり、まちづくりに反映できたことは、大きな収穫です」

米国のマイケル・ポーター教授が唱えるCSV経営(Creating Shared Value・共有価値創造)が注目を浴びていますが、その基本理念は「企業と社会の目標が共通になる」。鉄輪のまちづくりのために、地元経営者の思いを集約したこの事業は、まさにCSV経営とつながるものがあります。

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実は2014年の募集で、いったん本事業は区切りを付け、これまでの優秀句や鉄輪のエッセイをまとめた冊子『湯けむり散歩』第二集が発刊されたばかり。

「選者である倉田紘文先生が2014年6月に亡くなられたのです。22年もの間、続けてこられたのも倉田先生のご指導があってこそ。引き続き俳句は募集していきますが、今後は先生の遺志も引き継ぎ、あらたなまちづくりに挑戦していきたい」

鉄輪が一望できる湯けむり展望台には、倉田先生の詠んだ、次の句が刻まれています。

「ゆけむりの 風と遊べる 小春かな」

鉄輪の“春”に向け、新たな鼓動が聴こえてきそうです。

profile



御宿 温泉閣

代表

河野 忠之

(鉄輪支部会員)



別府市風呂本1組

TEL.0977-66-1767

■オフィシャルサイト
http://onsenkaku.sakura.ne.jp/