(2)百人一首6番歌「かささぎの渡せる橋におく霜の 白きを見れば夜ぞ更けにける」の作者。ここから、都で生活する何の不自由もない人だろう、と思っていた。
(3)万葉集の編集人:ここからゴリゴリ文系の人だろう、と思っていた。
でも、これが変わったのです。
きっかけは「放逸れたる鷹を思ひて夢見、感悦びて作る歌」という長歌を見たこと。
どういう内容かというと、鷹狩りが大好きな家持が、狩猟能力が特別優れた鷹を手に入れ、それはそれは大切にしていた。
ところが飼育係の“狂れたる醜つ翁”こと鷹の養吏・山田史君麻呂が無断で野に連れ出したあげく、見失ってしまう。それを知った家持が手を尽くして探したがなかなか見つからずガックリ来る。
しかし、ある晩、夢に娘が出て来て「その鷹は、しばらくすると見つかります」と告げてくれた、という話。
この歌から家持は
・野に出て鷹狩りするのが大好きなアウトドア派。
・勝手なマネをした者への罵倒ぶり。
・夢のお告げに救われるタイプ。
というキャラの人物と知り、意外だった。
これ、すごくないですか。
そういうわけで、
(1)大伴旅人の息子だからボンボンだろう、というイメージは上書きされました。
(2)「かささぎの渡せる橋」の歌から、雅というイメージは残りつつ、家持=雅なだけの人では全くないな、と分かりました。
(3)万葉集の編集人、だから文系というイメージは短絡的過ぎました。大伴の名を継承する武門系の官人でありました。
こうだろうと思い込んでいたイメージが何かきっかけがあると大きく変わることがある、という話でした。
家持は二十数年後に恩赦、名誉回復、万葉集も閲覧可能となりました。最後に、家持が鷹を愛でる歌を一首。