
▼万葉集には地名の吉野が出て来る歌がある。そのたびに大分にも吉野があるんだよと思う。たしかに奈良の吉野は持統天皇が30回以上も通ったマジの聖地。一方、大分の吉野には名物の鶏飯がある。
▼そこで今回は奈良の吉野をリスペクトしつつ、大分の吉野に思いをはせる。都合が良いことに万葉集の第七巻には「吉野作」という題でまとめられた作者不明の五首がある。これを大分の解釈で味わいましょう。
【和歌のスタイルで表現してみた】
■Usage #115
「悲し」の世界を広げたいときにこの歌
[元歌]
神さぶる岩根こごしきみ吉野の 水分山を見れば悲しも 万1130
▼神さびた様子のごつごつした岩がある吉野の水分山。ここを見ると身が引き締まる思いです。
[解説]
いやいや大分には吉野だけじゃなくて、水分峠があるんですけど、どうなってるんですか(笑)、と言いたくなるほど同じ地名が重なって嬉しい。「岩根こごしき」という言葉からは、岩肌がごつごつしている由布岳の姿が浮かぶ。横断道路側の眺めからもさることながら、反対の塚原側から見る由布岳は岩根こごしき感がさらに強い。「悲しも」の気分に浸りたい人におススメしたい。
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■Usage #116
好きな場所を推したくなる気持ち
[元歌]
皆人の恋ふるみ吉野今日見れば うべも恋ひけり山川清み 万1131
▼みんなが大好きな吉野、その理由ははっきりしています、今日も山と川が清らかですから。
[解説]
はい、こちらの歌に出て来る「山川清み」を見ると、大分の吉野で始まり大野川に合流し大分市内を流れる吉野川を連想します。大分県ホタルの里58選に認定されている「山川清み」の吉野川。
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■Usage #117
ツンデレ表現したいときの手本
[元歌]
夢のわだ言にしありけりうつつにも 見て来るものを思ひし思へば 万1132
▼「夢のわだ」とは言葉だけの存在になった。思い続けていたものを実際に見て来たので。
[解説]
これは独特のツンデレな言い方をしている歌。遠歩きや旅をする人にはそれぞれの「夢のわだ」を「見て来る」楽しみがあるのだろう。この歌からは夢だったものが叶った後の寂しさを感じさせる。浮かれるだけの気持ちではなく、どこかにほんのりと寂しさの隠し味が香る。
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■Usage #118
嬉しい時に使ってみよう「いやとこしへに」
[元歌]
すめろきの神の宮人ところづら いやとこしくに我れかへり見む 万1133
▼代々の大君に仕えてきた宮人と同じく、吉野を見に我らも戻ってこよう。
[解説]
これから先もずっと〇〇しよう、という気持ちを表明した歌。続けたい、終わりにしたくない、という気持ちが強いとき我われは「いやとこしくに」的な表現を口にする。これは万葉以来の伝統だったのだ。ところでこの歌の主人公は、宮人か、来訪者かによって、味わいが変わる。宮人とすると、我らが伝統を引き継ぎますぞ、という決意表明の歌になる。ここでは見物に来た来訪者の気持ちで解釈しました。
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■Usage #118
嬉しい時に使ってみよう「万代までに」
[元歌]
吉野川巌と柏と常盤なす 我れは通はむ万代までに 万1134
▼岩と柏の木がいつまでも変わらないように、私は吉野川にこれからも通います。
[解説]
この歌も前と同じく、これから先もずっとずっと、という気持ちを表明する歌。この歌の作者は、通いたいと思う理由を説明していない。この歌の作者は「巌と柏と常盤なす」奈良の吉野川をすごく大切にしているのが分かる。急に思い出したけど、50数年前、宇目町出身の高校生が川と山の清らかさを語っていた。この人は結構な乱暴者だっただけにそのギャップが忘れられない。
今回は作者未詳の歌ばかりなので、画像は吉野に関係する人をピックアップしました。
・天武天皇 吉野で子どもを集め、みんな仲良くする誓いを立てた天皇
・高市皇子 吉野の誓いに参加した天武天皇の子
・持統天皇 30回以上吉野に通った
・三輪高市麻呂 収穫期に吉野に行幸する持統天皇を諫めた
・柿本 人麻呂 万葉集第七巻は人麻呂歌集の歌が多い
